坂本真綾、速水奨、津田健次郎ら豪華声優陣が熱演!「チ。 ―地球の運動について―」の魅力に迫る
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2025.03.21
地動説が禁忌とされた時代、真理の証明に命を懸けた者たちの物語「チ。 ―地球の運動について―」。魚豊(うおと)の同名漫画を原作に、2024年10月のTVアニメ放送開始から多くの視聴者を惹きつけている。描かれるのは宇宙学、宗教、哲学、それとも純粋な探究心か。一見すると難解なテーマにも思えるが、事前の知識は一切必要ない。緻密なストーリーと熱い人間ドラマが織りなす展開に、気づけば鳥肌が立つほどの感動が押し寄せる。そんな本作の魅力を4つのポイントに注目して紹介する。
キャラクターから見た美しい夜空を追体験!
舞台は15世紀のヨーロッパ某国。C教の教義では「神が創造した地球こそ宇宙の中心」とされ、それに反する地動説は異端とみなされていた。唱えた者には処刑の裁きが下る――。神童と呼ばれる少年ラファウは、飛び級で大学への進学が決まるほどの才覚を持ちながら、熱中していた天文学を捨て、最も重要とされた神学の道を選ぶと宣言する。周囲の期待を背負い、誰もがうらやむ順風満帆な人生を歩んでいた彼の前に現れたのは、禁忌に触れた異端思想の持ち主として投獄されていた謎の学者フベルト。この出会いが、ラファウの運命を大きく変えていく。
二人を結びつけたのは、宇宙への飽くなき探究心。物語の中で描かれる天体観測のシーンは、ただ美しい星空を映すのではなく、六等星まで観測できるラファウの目が捉えた彼だけの宇宙の広がりを映し出している。澄み渡る夜空に瞬く無数の星々は、まるでプラネタリウムのような幻想的な光景。そこには、彼らが心を奪われた世界の輝きが広がっている。
揺れ動く人間の信念と正義が交錯する物語
本作はフィクションでありながら、史実に縛られないからこそ"未知の真理に出会った瞬間の感動"をリアルタイムで追体験できる。研究者たちが文字通り命を懸けて真理に挑む姿はまばゆいほどの輝きを放ち、見ている側の胸にも熱を灯す。気づけば彼らの隣人になったような気分で応援し、敵対する異端審問官ノヴァクの影におびえ、見つかるのではと手に汗握るほど没入してしまう。
しかし、当時の世界では地動説こそが"悪"。現代の感覚では想像もつかないが、「地動説を唱える者は魔女に取り憑かれている」と信じ、血に染まった袖で異端者を裁く異端審問官たちにとって、それは信仰に基づく正義だった。彼らを残酷な存在と断じるのは簡単だ。しかし、物語が進むにつれ、社会の仕組みや両者の信念が丁寧に描かれ、ふと気づくとノヴァクの葛藤に最も感情移入している自分がいる。何を信じ、何のために命を燃やすのか。正義も悪もただの一面に過ぎず、時代が変わっても変わらない人間の本質が浮かび上がってくる。
豪華声優陣がキャラクターに命を吹き込む!
声優陣の熱演も、本作の魅力を語るうえで欠かせない。ラファウ役の坂本真綾、フベルト役の速水奨、ノヴァク役の津田健次郎ら実力派が登場人物に魂を吹き込み、物語の緊迫感を極限まで高めている。さらに、小西克幸や中村悠一、日野聡ら人気声優が次々に登場し、脇を固めるキャスティングにも隙がない。一方で、2020年に「声優アワード」新人女優賞を受賞した島袋美由利や、本作で初めてTVアニメの主要キャラクターに抜てきされた仁見紗綾といった若手声優も名を連ねる。
この布陣は、単なる豪華キャスティングにとどまらない。研究者たちが命を懸けて真理をつないでいく物語と同じように、第一線で活躍する声優たちが新人へとバトンを託すかのような配役が、作品のテーマそのものを体現している。言葉に宿る熱量が、世代を超えて受け継がれてゆく。
変化する映像&込められた探求のメッセージ
オープニング映像も、知の探求を受け継ぐリレーのように変化していく。主題歌はサカナクションの「怪獣」。2クールを通じて同じ楽曲が使用されるが、物語の進行に合わせて映像が差し替えられ、歌詞の響き方までもが変わっていく。「この世界は好都合に未完成 だから知りたいんだ」、このフレーズがすべてを物語っている。世界の理を知りたいという純粋な欲求は、科学者だけでなく誰しもが持つ本能的な願いだ。特定のストーリーに寄り添いすぎない楽曲だからこそ、作品の根底にある普遍的なテーマと響き合い、"解釈一致"としか言いようのない説得力を放っている。
エンディング曲はヨルシカが担当。1クール目「アポリア」、2クール目「へび」と、どちらも哲学や知の探求をテーマにした楽曲で、物語が進むほどに作品との親和性が深まっていく。特に「アポリア」(※答えにたどり着けない問いを意味する哲学用語)は、問い続けることそのものに価値があるという本作のメッセージと呼応している。映像・音楽・物語が三位一体となり、視聴者にも「知りたい」という衝動を呼び覚ます。そんな仕掛けが張り巡らされたオープニングとエンディングにも注目してほしい。
文/川井美波