サッカーに興味がない人でも目が離せない!「ブルーロック VS. U-20 JAPAN」ほか、オススメの2024秋アニメ【サンキュータツオ】

サッカーに興味がない人でも目が離せない!「ブルーロック VS. U-20 JAPAN」ほか、オススメの2024秋アニメ【サンキュータツオ】

はじめまして。サンキュータツオと申します。普段は米粒写経という漫才師をしながら、東北芸術工科大学という美術大学にも務めています。マンガにラノベ、ボカロに小説、さまざまな学生を教えています。しかしそれは世を忍ぶ仮の姿。

そう、私の正体は「ただひたすらアニメ見るマン」だったのです!

というわけなのですが、あまり大きな声で言えませんので、家族向けには<『広辞苑 第七版』のアニメ、マンガ項目の項目選定なども担当した経緯から、あくまで語彙(ごい)調査のためにアニメを見ている>ことにしています。

そんな私が1クールずつオススメのアニメを紹介しちゃおうじゃないかという、大きな独り言だと思ってください。

■ブルーロック VS. U-20 JAPAN

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(C)金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会

サッカーに興味がない人でも目が離せない話題沸騰のアニメが「ブルーロック」。

決定力不足に悩む日本フットボール連合が、日本がワールドカップで優勝するため
のエゴイストストライカーを養成するために、高校生FW300人を集めて競争させる。サッカー版「バトル・ロワイヤル」的な、生き残りを懸けた戦い。

この作品の注目ポイントは、高校生スポーツものに要素として必ず付いてくる、友情や恋愛といった人間関係を全くメインとしていないところ。一人のサッカー選手として他より抜きんでるためには何が必要か、自分の武器は何か、他の選手の特徴は何かに向き合い、成長していく姿をメインとしている。ただボールの動きや、試合の展開などで楽しませるのではなく、サッカーというスポーツの「ボールを操る人間の心の中で何が起こっているのか」といったことが描かれる。実はデスゲーム的サスペンスよりも、この点が画期的かつ面白いポイントだ。故に、サッカーに興味がない人でも目が離せない。

選手一人ひとりの能力をマンガ的に特殊能力化はしているものの、むしろ「サッカーってこういう競技だったんだ!」という気付きも得られるほどに、スポーツ競技としての駆け引きの醍醐味(だいごみ)を描いているのだ。

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(C)金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会

団体競技で共にプレーする選手を、「友情」ではなく「共闘」する相手として描く。選手たちがお互いを「仲が良い」からという理由ではなく、相手の姿勢や特徴を知ってから、心からリスペクトする姿も潔くて心地よい。これって実社会における「仕事」論でも同様だ。好きとか嫌いだけで仕事なんかしないのと同様、プロスポーツ選手を目指す人間もそこは「仕事」としてサッカーをする。そういう意味ではこの作品は子どもから大人まで楽しめる普遍的なテーマ、つまり「自分」とは何か、「仕事や役割」とは何かを投げかけてくる。すぐに心が熱くなりますよ。

アニメなので主人公をはじめとした選手たちの「心の声」と「実際の動き」が手に取るように理解でき、同時に実写カメラではリプレイで確認するしかない選手の動きも、3Dでリアルタイムに観戦しているような錯覚すら覚える。特徴的な動きだけを描き、細かいボールの動きよりも「心の動き」を絵と音で表現する手法にはうなった!

今回は3次セレクションで、35人からメンバーを絞ってU-20の日本代表と戦うところまでを描く。だまされたと思って最初の2話くらい見てほしい。キレイごとなど一切通用しない、スポーツの醍醐味(だいごみ)、残酷さや面白さ、さらには人間模様までも堪能させてくれる映像世界にハマってもらえると思う。

選手の心理で楽しませるという点では、野球を扱った「おおきく振りかぶって」などが好きだったアニメファンには特にオススメしたい。

まだまだあります!サンキュータツオのおすすめアニメ

■転生貴族、鑑定スキルで成り上がる 第2期

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(C)未来人A・講談社/鑑定スキルで成り上がる製作委員会

「異世界」とか「異世界転生」って、そろそろ国語辞典にもバッチリ入れるべきだよなあと思うくらい、異世界モノは毎クール安定供給されている。もはや日本の文化となったと言ってもいい。

しかし、その多くは異世界へ転生すると、現実世界では発揮されなかった異能力に目覚めたりして、ストレスなく都合の良い物語展開をしたりする。もちろんそれも仕事で疲れて帰ってきてから見るアニメとしては悪くない。ただ、この作品は、主人公のアルスに魔法が使えたり、強力な攻撃スキルが宿ったりはしない。35歳のサラリーマンが過労による突然死をしてしまったものの、転生した後は前世でのシミュレーションゲームで培った能力が役に立つ。それは、他者の才能をステータスとして見抜く"鑑定スキル"だった! そうなのだ、「統率91、武勇78、知略80、政治92」みたいなステータスとして見抜くことができるという、現実世界でいう「人を見る目」だ。

アルスはこのスキルによって、見た目でバカにされそうな子どもや、差別の対象となるような民族の者たちから続々と「逸材」を見抜き仲間にしていく。この作品を見ていて心地よいのは、このように真の意味での「多様性」を能力主義のもとに認めている点にある。ルッキズムや貧困、民族間対立といった現代的な問題を、物語の中で扱った志の高さだ。

今期は、アルスのいる「ミーシアン州」の次期総督の座を巡る有力者同士の戦いで、アルスたちに理解のあるリーダーがいる陣営の軍議に参加するところからスタート。とはいえ、理解があるのはリーダーの「クラン」だけで、その部下たちは少年の見た目のアルスや、そのメンバーたちを見て反発すら抱く。そんな苦しい立場からアルスたちが、その力を証明していく様がテンポよく描かれる。このアニメ、テンポが面白いんだよねえ。かったるさが一切ない。

異世界モノは、世界や設定を説明するくだりが長すぎると、かったるくなっちゃうものだけれど、このアニメはテンポを優先して手際よく情報を小出しにしてくれるので、情報が多くなって疲れるということもない。楽しいのよ!

■ダンダダン

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(C)龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会

霊媒師の家系に生まれた女子高生・モモこと綾瀬桃と、その同級生でオカルトマニアのオカルンこと高倉健が迫りくる怪奇に挑む「オカルティックバトル&青春物語」という触れ込みの本作は、集英社「少年ジャンプ+」にて連載中の、龍幸伸による人気漫画の映像化。幽霊は信じるけど宇宙人は信じていないというモモと、宇宙人は信じるけど幽霊は信じないというオカルン。ギャルとオタクの奇妙でおかしな「共闘」が、今まで見たことのないような映像の中で描かれる。

一風変わった世界観のマンガを映像化するのは難しい。アニメの中で描かれる「現実世界」と、宇宙人や幽霊が出現する「非日常的世界」の境界線を演出上でどう描き分けるか、手腕が試されるからだ。しかし、ここで注目すべきはサイエンスSARU制作という点。テレビアニメでは「映像研には手を出すな!」、劇場版アニメでは『夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』『犬王』などを手掛けた監督・湯浅政明、プロデューサー・Eunyoung Choiによって設立された会社。最近では山田尚子監督「平家物語」『きみの色』、霜山朋久監督「ユーレイデコ」、夏目真悟監督『四畳半タイムマシンブルース』なども制作している。今回はこの会社で育った山代風我が監督を務める。がぜん注目すべきアニメーション制作会社の新人監督の登場というわけで、見ない手はない。作家性を主張しつつも、しっかりとそれが作品の本質の映像化と連動していて嫌みがない。いわゆる「萌えキャラ」的な描き方ではないものの、モモが出てくるだけでドキドキする。映像のテンションとエモーションが極めて高い作品となっている。

扱う題材も、描き方も、いわゆる「売れ線」ぽい感じの、置きにいく雰囲気ではないのだが、そこがこのアニメのいとおしく、志の高いところ。スタイリッシュな映像のルックはアニメーションならではなので、これは継続して視聴してもらいたい。 

■魔法使いになれなかった女の子の話

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(C)「まほなれ」製作委員会

通称「まほなれ」。

魔法少女モノも、もはや「文化」と言えるほどに、あの手この手で新しいものが作られる。最近だと「まほあこ」こと「魔法少女に憧れて」で、魔法少女に憧れていた主人公が変身すると、なぜか魔法少女と敵対する悪役キャラになってしまうというフックが面白かったが、この作品は魔法使いに憧れていたのに、魔法学校の「国家魔法師養成専門学科」、通称「マ組」に不合格になってしまい、普通科に入学してしまう主人公・クルミ=ミライの物語。

キーマンになるのは、このクルミが入学した普通科に急きょ担任として着任した、見た目が子どものような国家魔法師ミナミ=スズキ。「私が担任になったっていうことは! ――皆さんには「魔法使い」になってもらいま~す!」という宣言のもと新学期が始まるが、クルミは普通科に存在することによって、魔法使い以外の目標をしっかり持っているクラスメートとも出会うことになる。ここがこのアニメの新鮮なところだった。例えば、魔法使いを目指すなら、魔法学校というのは誰しもが考えつくかもしれない。しかし、そこで落ちこぼれた主人公が能力に覚醒していく、という物語では登場人物たちの夢や目標に大差はない。行きつくところが「魔法使い」だからだ。しかし、この作品では学園に「普通科」という存在を作ることで、目標にも多様性や熱意にグラデーションを持たせたところが面白い。

考えてみれば、われわれの現実世界も同じである。目標や夢、そしてそこに向かう熱もそれぞれ違う者同士が共存する。故にこの作品はそんな「現代社会」をファンタジー作品で描いているとも言えるのだ。普遍的な魅力を持つ作品になるような、可能性を感じるテーマ設定で続きが気になる。

いやー、この他にも注目作が毎週最新話を放送・配信してくれているので、アニメ見るのに忙しい!

私たちは幸せな時代を生きている! てなわけで、毎クールこんな感じで作品紹介していきますので今後ともどうぞよろしく!

サンキュータツオ

サンキュータツオ (芸人、日本語学者)

芸人、日本語学者。芸人として活動するかたわら大学教員を務め、アニメなどのサブカルチャーにも造詣が深いサンキュータツオが、今クールのおすすめアニメを紹介する。

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サンキュータツオ

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