アイドルのドキュメンタリーなのかもしれないアニメ「アイドルマスター シャイニーカラーズ」【松井玲奈】

松井玲奈

松井玲奈 (役者、小説家)

役者、小説家。アニメ好きとしても知られる松井玲奈が毎回1つの作品を取り上げて、その魅力を再発見する。

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松井玲奈

松井玲奈 (役者、小説家)

役者、小説家。アニメ好きとしても知られる松井玲奈が毎回1つの作品を取り上げて、その魅力を再発見する。

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アイドルのドキュメンタリーなのかもしれないアニメ「アイドルマスター シャイニーカラーズ」【松井玲奈】

さて、暑い夏が終わり、秋がやってきました。芸術の秋、ということはアニメ鑑賞の秋でもあるはずです。そんなアニメを見るのにぴったりな時期にご紹介するのはアニメ「アイドルマスター シャイニーカラーズ」。

「アイドルマスター」(以下、アイマス)シリーズはアーケードゲームから出発したコンテンツであり、プレイヤーはP(プロデューサー)になってアイドルたちを育成していきます。何を隠そうこの私も無印「アイドルマスター」のPをやっておりました。どうも、松井Pです。(菊地真ちゃん担当)

そのアイマスにはさまざまなシリーズがあり、現在TVアニメを放送しているのがアニメ「アイドルマスター シャイニーカラーズ」(以下シャニアニ)。283(ツバサ)プロダクションに所属しているアイドルグループ4組計16人の成長を描いた今作は、3DCGアニメーションであり、新たな挑戦が作品に盛り込まれています。

さて、シャニアニのおすすめポイントは3つ
・アニメではなくドキュメンタリー
・アイドルアニメのウィークポイントの解消
・ここから広がる物語

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(C)Bandai Namco Entertainment Inc.

ドキュメンタリータッチで描かれるアイドルの姿

まず、1つ目は「アニメではなくドキュメンタリー」。

今回、シャニアニを紹介するにあたり全12話を鑑賞した私。4話くらい見たところである違和感に気がつきます。

「このアニメ、他のアイドルアニメと様子が違うぞ」

本作ではまず、キャラクター紹介を兼ねた、4組のユニットにフォーカスした回が展開されていきます。MV撮影に臨む様子を1話かけて追いかけたり、イベントに参加するまでの過程を追いかけたりしていくのですが、過剰な演出をせず、誇張したキャラ付けをすることなく、仕事に向き合い、そこで起きたトラブルにどう対処をするのか、それを描くだけで十分人間性が浮かんでくる。アイドルは計16人。これだけの人数をいっぺんに覚えてもらうのはなかなか大変なこと。そのために過剰なキャラ付けをしてキャラを立たせる展開を選ぶこともできただろうに、それをせず等身大のアイドルたちの姿を描いているのです。

劇伴(劇中伴奏音楽)もしっとりし、見る側に静けさを突き付けてくる時もあります。最初はその淡々とした展開に戸惑いもありましたが、物語中盤、アイドルたちがそれぞれの仕事の様子をオフショットムービーとして撮り出したとき、私は気づいたのです。

「これはアイドルのドキュメンタリーなのかもしれない」

しかも、このドキュメンタリーはアイドルそれぞれの挫折にフォーカスするのではなく、全員が同じ挫折を味わい、それをバネにさらなる飛躍を目指すというもの。誰か一人がはちゃめちゃに病んだり、泣いたり、嫉妬したりなんてことはない。みんなで手を取り合い、合同ライブを成功させるべく、背中に生えたばかりの翼を一生懸命に羽ばたかせようとしている。

とんでもない余談ですが、この283プロの社長の声優は津田健次郎さん。私がひいきにしているアイドルアニメは、津田さんが非常にきな臭いくせ者マネージャーとして登場するせいか、283プロの社長が物語終盤まで信用なりませんでした。「僕の理想のアイドルを作るんだ!」などと、マントを着て高笑いし始めないかハラハラしていました。

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(C)Bandai Namco Entertainment Inc.

日常とライブの境界をなくすフル3DCGアニメーション

さて、2つ目は「アイドルアニメのウィークポイントの解消」。

アイドルアニメは主に日常パートとLIVEパートに別れていることが多いです。日常パートはデジタルアニメーションが多く、LIVEパートになるとCGアニメーションに変わるが故に、推しのビジュアルや映像の質感の違いに違和感を持ったことがある方もいるのではないでしょうか? もちろんCG LIVEのキャラクターは素晴らしい出来であることは大前提としても「日常パートとできる限り同じクオリティーの推しが見たい」と思ってしまうのもオタクのさが。

本作はフル3DCGアニメーションであるからこそ、全編を通して同じビジュアルのアイドルたちを拝むことができるのです。しかも、常に「推しの顔がいい」状態を体験できる!モーションもキャラクターごとに違い、同じ振り付けを踊っていてもリズムの取り方、体重移動の仕方など、しっかりとパフォーマンスに個性がある。最初はバラバラだったダンスが、練習を重ねる中で個性を生かしつつも、タイミングがぴったりと合っていく様はアイドルたちの成長を感じられる素敵な部分です。欲をいえば16人そろったパフォーマンスでは、フォーメンションチェンジがあればなお良かったのですが、それを抜きにしてもLIVEパートのモーションクオリティーは高く、バーチャルライブを見ている感覚になれます。

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(C)Bandai Namco Entertainment Inc.

新しいアイドルたちと共に切り拓くシャニアニの世界

3つ目は「ここから広がる物語」。

前述の通り、本作は2nd seasonがある作品。シャニカラ初期メンバー16人に、新たに2グループ計7人のアイドルが加わることにより、アイドルたちはさらに大きく羽ばたいていくことになるでしょう。アイドルが多ければ多いほど、誰を応援するか考える楽しみが増えます。全員を応援し見守る「箱推し」でもいい。特定のグループや個人をひいきにしてもいい。アニメから入り、アプリゲームでそれぞれの個性をさらに知っていくことも楽しそうです。ちなみに私はアニメの中ではアイドルユニット「放課後クライマックスガールズ」が気になっているところ。"放クラ"の勢いのあるお祭り騒ぎのような楽しいパフォーマンスに、アニメシリーズを見て引きつけられました。

さて、シャニアニの魅力が少しでも伝わったでしょうか? この秋、ひたむきに頑張るアイドルたちに新たに出会う人が一人でも増えればうれしく思います。ぜひ彼女たちが羽ばたく瞬間を目撃してほしいです。