ギャップも魅力!「オーバーロード」が支持される理由
2024.09.03
近年、ライトノベルやコミックなどで数多くのタイトルが大ヒットしているジャンル、異世界ダークファンタジー。その中でも、世界的な人気を誇る作品として知られるのが「オーバーロード」だ。
時は2138年。一大ブームを巻き起こしたものの、サービス終了が決定した仮想現実体感型オンラインゲーム《ユグドラシル》のプレイヤーであるモモンガは、仲間と栄華を誇った本拠地・ナザリック地下大墳墓で一人静かにその時を待っていた。しかし、終了時間を過ぎてもログアウトされない異常事態が発生。その上、自由に動くことのないゲーム内のキャラクターたちが意思を持って動きだし、さらにナザリックの外には見たこともない異世界が広がっていた。モモンガはかつての仲間を探すため、ギルドネームであった"アインズ・ウール・ゴウン"を名乗り、異世界にその名をとどろかせることを決意する。
2010年に小説投稿サイトで連載が開始され、2015年には満を持してのTVアニメ化。今なお新しいファンを増やし続けている本作だが、その大きな要因となるのが、オンラインゲームをモチーフとした世界観だ。「武器は剣と魔法」「ゴブリンやリザードマンなど、さまざまな種族が存在する」など、TVゲームやスマホゲームなどでファンタジーRPGをプレイしたことがある年代ならば、すんなりと理解し、没入することが可能な設定でストーリーが展開していく。また、登場人物を"ゲーム内のアバター"として動かしている人間が存在している、という設定も他のジャンルでは味わえない深みをキャラクターに与えている。
そして、本作ではガイコツの姿をしたアンデッドという、通常の作品ではモンスターとして扱われる種族が主人公に据えられている。それだけでなく、悪魔や吸血鬼、魔獣など、敵キャラクターとして勇者たちに倒されていく存在だった彼らが、人間たちを圧倒的な戦力差で倒していく姿は斬新かつ痛快だ。
主人公・アインズは、不気味なガイコツの姿をした最強の魔法使いだが、その中身が平凡な青年ということもあり、アンデッドでありながら人間種や亜人種をはじめ、すべての種族が共存できる理想郷を求め、国家を統治するヒーローでもある。そんな主人公を演じているのが『テレビアニメ「鬼滅の刃」』の煉󠄁獄杏寿郎(れんごくきょうじゅろう)役で知られる日野聡だ。威厳たっぷりな言動で臣下を従えているが、内心では予想外の事態に一喜一憂し、君主らしい振る舞いを日記帳に書き記しているなど、ギャップを重厚な低音と軽やかな声を使い分けて表現している。
また、ヴィジュアルとその言動の落差が楽しいキャラクターが数多く登場するのも、本シリーズが支持されている理由の一つだ。日頃はおしとやかだが、アインズへ抱く愛情の大きさ故に、ときどきわれを忘れる美しき悪魔・アルベド。そんな彼女とアインズの正妻の座をめぐってたびたび衝突し、特殊な趣味嗜好(しこう)を持ちながら幼い少女のような容姿をした吸血鬼・シャルティアなど、一筋縄ではいかないキャラクターたちがそろう。
シリーズ最新作『劇場版「オーバーロード」聖王国編』が9月20日(金)に公開されるなど、アニメ化10周年を前にさらなる盛り上がりを見せる「オーバーロード」の魅力をこの機会に味わってほしい。
文/中村実香