岩崎こよみ(埼玉上尾メディックス)、大同生命SVリーグ 2026-27への覚悟「出産からの復帰は五輪出場と同じくらいの価値がある」
スポーツ 生中継見放題インタビュー
2026.10.04
いよいよ2026年10月10日(土)に2026-27 大同生命SV.LEAGUE WOMENが開幕する。今回は、昨季の年間順位が8位だった埼玉上尾メディックスの岩崎こよみに独占インタビュー。昨季を振り返りながら、チームの強みや今季の目標、セッターの注目ポイントなどを語ってもらった。「大同生命SVリーグ 2026-27」は、男女全試合を「J SPORTSオンデマンド」でLIVE配信。
■フィジカル面の向上と、テンポの速い攻撃への手応え
――昨季はチャンピオンシップに進出して、最終的に年間8位という結果でした。改めてどんなシーズンでしたか?
「2チーム制を採用し、土曜日と日曜日で出場するメンバーがおおよそ決まっている形で戦いました。その中で多くの選手に出場機会があり、全員が1試合1試合を自分のこととして捉え、取り組むことができたので、すごくいいシーズンだったと思っています」
――ご自身のプレーに関してはいかがでしたか?
「前年までいた佐藤優花選手は私が信頼していた選手で、どんなトスでも打ってくれるという安心感があったんです。佐藤選手が抜けたことで、ある意味全員をうまく使わないといけないシーズンだったなと。そのことに関して、少し自分の中で足りないものがあったなと反省しています。十数年前にアキレス腱を切ったんですけど、けがをして以来の最高到達点が出て、ランニングトレーニングの効果を感じました。フィジカル面もすごく向上した感覚があります。シーズンを通してコンディションが良かったので、今シーズンも続けていきたいです」
――今シーズン、優勝するためには何が必要だと感じていますか?
「全てにおいて、レベルアップが必要だと思います。内瀬戸真実選手、岩澤実育選手、黒後愛選手が抜けたということで、サーブレシーブの安定感が課題になってくるのかなと。多少ズレたとしても、セッターが何とか修正して3本目につなげていくことが重要だと考えています。セッターとしては、BパスやCパス(サーブレシーブがネットから離れた状態)で、いかにいいトスをアタッカーに上げられるのか。そこが大事ですし、今はテンポの速い攻撃で相手を崩すというプレーの練習を頑張っているところです。それが試合で出せたらいいなと思っています」

■逆を突くのはセッターの技術。試合を見る時の注目ポイント
――セッターのプレーで「ここを見てほしい」というポイントを教えてください。
「相手のブロックが1枚や1枚半しかついていない状態で攻撃できているかどうか。ノーブロックでアタックを決められたら、セッターのおかげだと思ってください(笑)。相手もセッターの動きを見ながらプレーしているので、ブロックを1枚にできたら上々。ブロックが何枚ついているのかを見ていたら面白いんじゃないかなと思います。
いつも意識しているのは、どんなボールからでもクイックを使える状態をつくり、全方向にトスすること。トスを上げるまで相手の真ん中のブロッカーが動けなかったり、逆を突かれていたりしたら、それはセッターの技術なんだなと思ってほしいです」
――セッターが2本目で自ら攻撃する"ツーアタック"も見どころの一つですか?
「得意なプレーではあるんですけど、やっぱり確実に決まるという自信がないとなかなか打てないですね。ずっと狙っている状態だと、あまりいいボールが行かないような気がして。やるからには、ここぞという場面で絶対に成功させると思いながら打っています」
――昨シーズンからチームメー卜になったオクム大庭冬美ハウィ選手はどんなアタッカーですか?
「対戦相手としてプレーしていたときもそうでしたけど、すごくパワーがあって強い球を打ち切れる選手だという印象です。繊細で優しい性格なので、何が何でも私が打つというよりは、みんながつないでくれたボールをしっかり決めたいと思っているのかなと。周りの人のためにプレーをすると力を発揮するところがあるような気がします」
――どんなトスを上げると良さが発揮されますか?
「低いトスよりは高いトスのほうが、打点もパワーも生かせます。今はテンポが速い攻撃を練習していて少し苦戦しているところがあるようですけど、基本的にはどこに上げてもしっかりと打ってくれる心強い選手。高さとパワーにスピードが加わったら相手にとっては嫌な選手になると思います」

■パリ五輪の過酷な環境と、出産からのコート復帰という「五輪と同じ価値」の挑戦
――昨シーズンが終わった後、オフはどのように過ごしましたか?
「今は子どもがいるので、オフは普段の生活に戻る感じです。時間があったら、会いたい人に会いに行っていました」
――2024年に開催された「パリ五輪」では全試合スタメン出場されました。五輪を経験したことでバレーボールへの向き合い方に変化はありましたか?
「とても華やかな舞台だったし、選手村の規模も大きくて、いろいろな有名選手と出会うことができました。ただ、いざ戦うとなると食事や部屋、体育館が使える時間の制限など、今までで一番過酷な環境だったなと思います。そういう裏側を見られたことは勉強になったし、そんな状況でも結果を出している人たちは本当にすごいなと改めて思いました」
――五輪に出場したことで、何かを成し遂げたという実感のようなものはありましたか?
「もちろんオリンピックに出たことは自分にとって大きな経験ではあるんですけど、子どもを産んだ後に復帰して、またもう一度コートに立つということもすごいチャレンジだったし、オリンピック出場と同じくらいの価値があることをやれたんじゃないかなと思いました。それに気付けたのは良かったです」
――復帰することは想像以上に大変でしたか?
「無事に出産できたんですけど、産後もこんなに痛いものなのかと思いました。それと、両親が一緒に暮らしてくれているので安心して子どもを任せられる環境なんですけど、いざ試合に行くとなるとものすごく寂しい気持ちになってしまって。子どものことが頭から離れなくて、バレーどころではなかったんです。結局、母と子どもを遠征に連れて行くことで解決しました。あの心の変化は想定外でしたね。周りの方たちに支えられて何とか復帰できて良かったです」

■東地区での上位進出へ。チーム内の"推し"は目黒安希選手
――10月から新しいシーズンが始まりますが、今季の目標は?
「とにかくけがなくシーズンを戦い切ること。今年からリーグのルールが少し変わって、東と西に分かれることになったんです。東地区で上位に入らないと次のステップに行けないので、まずはそれが目標ですね」
――ちなみに、チームの中で注目している選手はいますか?
「去年からずっと、『チーム内での推しは誰ですか?』と聞かれたら『目黒安希』と言っているんですよ。たくさん試合に出たことでうれしいこともしんどいことも経験し、一皮むけたと思うので、今シーズンも期待しています」
――"推し"であることを直接目黒選手に伝えているんですか?
「目黒は、直接言われたらプレッシャーに感じるタイプなのかなと勝手に思っていて。こういう取材などを通して、遠回しに本人の耳に入ればいいかなと思っています(笑)」

PROFILE
1989年5月1日生まれ。東京都出身。セッター。身長175センチ、最高到達点301センチ。9歳からバレーボールを始め、下北沢成徳高校卒業後、V・プレミアリーグのパイオニアレッドウィングスに入団。2009年に初めて日本代表に選出される。2014年、パイオニアの廃部に伴い、上尾メディックス(現・埼玉上尾メディックス)へ移籍。2018-19シーズンにはイタリア・セリエAのラルディーニ・フィロットラーノでプレーした。2020-21シーズンは出産のため全休したが、2021-22シーズンに復帰。2024年のパリ五輪では、日本が戦った全3試合にスタメン出場した。
取材・文/小池貴之(STABLENT) 撮影/大川晋児




