日本男子アルペンスキー界のホープ・片山龍馬選手がワールドカップ開幕に向けて肉体改造に挑む!
スポーツ インタビュー
2026.10.16
日本アルペンスキー界の次世代を担う有望選手の一人、片山龍馬選手。国内トップクラスのスキーヤーであり、2024~25シーズンには、国際スキー・スノーボード連盟(FIS)主催のファーイーストカップ(FEC)で総合タイトルを獲得し、ワールドカップにも参戦している。そんな片山選手にインタビューを敢行し、昨季の振り返りと今シーズンへの意気込み、と今後の競技人生の目標を伺った。

――そもそも、片山選手がスキーを始めたのは何歳の時ですか?
「スキーは3歳で始めました。もともとは両親が趣味でやっていて、何度か連れていかれるうちに自然に好きになっていましたね。最初は級が上がるのが楽しみで、幼稚園の時にジュニアの1級を取得したんです。そこからステップアップする感じでアルペンスキーを始めて、小学校の高学年くらいから本格的に取り組むようになりました。旭川市の出身ですが、高校はスキーの強豪である小樽の北照高校に進んで、東海大学を経て現在まで一貫してアルペンスキー一筋です」
――幼稚園で1級取得ですか...。やはり才能があったんでしょうね。ところで、選手としての特徴と強みについて、自己分析をしてもらえますか?
「僕の強みは、滑らかなエッジングだと思っています。急激なエッジングをすると、ターンする時に雪煙が多く立ち上がって、減速するんです。当然タイムは落ちてしまう。でもクリーンなターンをすれば、減速を抑えられる。そんなタイムロスを減らす柔らかい滑りこそが、自分の強みです。種目としてはジャイアントスラローム(大回転)が一番得意ですね」
――なるほど。では、現状のご自身の課題点を教えてください。
「アルペンスキーは、2本滑って合計タイムで争います。しかし今季は、2本を揃えられないレースが多いシーズンでした...。1本目でトップに立っても2本目にまくられたり、ミスをして順位を落とすことが多かったんですね。DNF(※Did Not Finish=途中棄権)になったりして、勝つチャンスを逃し、何度か悔しい思いをしました。これまでの自分はメンタルが強いほうだと自認していたのですが、今シーズンは2本目の失敗が多かったことで、メンタル面も含めて自分自身を見つめ直しているところです。2本目にアドレナリンが出過ぎて、本来の滑りができていなかったのかもしれないし、自分自身の力を信じられなかった可能性もある。自分で思っているほど、メンタルが強くなかったかもしれないので...」

――そうなると、昨季は不本意なシーズンになってしまったのでしょうか?
「不本意というか、トータル的には、耐えたシーズンでした。前半の流れは確かによくなかったのですが、中盤から後半にかけては多少持ち直し、ポイントを取ることもありましたから。前半の悪い流れを修正して、ある程度の成績にはなったので、決して好調とは言えないまでも、来季への手ごたえをつかんで終えた形にはなったのかなと思います」
――ワールドカップに参戦して、いわゆる"世界の壁"を感じることはありますか?
「2年前に初めてワールドカップの舞台に立つことができましたが、スタート順も後ろですし、世界のトップ選手たちとの実力差は肌で感じていますね。開幕戦に向けての準備もまだまだ足りていないと思うので、今年は6月にはヨーロッパに向かって、さらに南半球に移動してしっかり練習を積んで10月の開幕戦に備える予定です。まずは世界のトップに追いつくためのスケジューリングを練り上げることから始めていきます。2シーズン、ワールドカップに出ていますが、世界を相手に戦うには相当な準備が必要だということは痛感しましたからね。アルペンのトップ選手たちは、体格もとてつもなく大きい。175cmの僕は、日本人選手としては小さいほうではないけど、GS(グランドスラローム)に出てくるヨーロッパの選手は、最低でも180cmを超えてきます。彼らと闘うには、身長差を跳ね返す強靭なフィジカルも必要だと思いますから。固い雪の難コースにもパワーで圧倒されないように肉体を鍛え上げるつもりです」
――片山選手は、J:COMのU16強化支援プロジェクト初年度の対象選手でしたね。それは片山選手にとってどのようなメリットをもたらしたのでしょうか? J:COMと一緒に、アルペンスキーU16を盛り上げていただく、アンバサダーにも就任されるとのことで、意気込みも聞かせてください。
「僕は中学2年の時にイタリア遠征に参加させてもらいました。当時の僕は国内ではかなり速い選手だったし、挫折を味わう経験がほとんどなかったのです。そんな時にイタリアに連れて行ってもらったことで、世界レベルの選手たちを間近で見て衝撃もあったし、そこで結果も出せずに悔しい思いもしました。中3の時は、どうにか戦えるようにはなっていたけど、まだまだチャンスを掴むには至らなかった。でも、世界の同年代の選手たちと戦うことで大いに刺激を得ることもできたし、貴重な機会をいただいたことに感謝しています。当時、僕よりも遅かったフィンランドのハルベリ選手が、昨シーズンはワールドカップで2位に入りました。そう考えると、僕も負けてはいられません。僕がアルペンスキーU16強化支援のアンバサダーになれば、ユース世代の選手たちに刺激も与えられると思うので、自分が活躍することで、彼らに勇気を与える意味でも頑張っていきたいですね」

――来シーズンに向けて着実に準備を進めていらっしゃると思いますが、改めて来季の抱負をお願いします。
「日本のアルペンスキー界を盛り上げるためには、自分たちが世界の舞台で活躍してメダルを獲るしかないと思っています。2027年は2月にクラン・モンタナ(スイス)で世界選手権が開催されます。まずは世界選手権に出場して、日本人選手がなかなか突破できていない20位以内を目指したい。30番以内に入らないと2本目に進めないので、まずはその壁をクリアすることですね。世界選手権で結果を出して自信を得られれば、次回の冬季オリンピック『フランスアルプス2030』でのメダル獲得も見えてくると思っています。アルペン競技では、日本人で20位以内に入ればすごい成績と言われますけど、それはスキー関係者の感覚に過ぎない。やはり世間一般では話題にならないでしょう。あくまでメダルを獲らなければ評価されないのがオリンピックなので、メダル獲得が目標です」
――片山選手は、世界のトップ選手たちと戦っているのですが、そこでご自身の糧になったこととは?
「試合で勝つことによって、自分を支えてくれる家族や関係者、スポンサーの方々に恩返しができます。自分が嬉しいだけでなく、皆さんが笑顔になってくれる。そんな瞬間が僕は大好きだし、アスリートとしての幸せを強く感じます。皆の笑顔が見たいし、恩返しがしたいから、勝利を届けたいと思って競技活動をしています。これまで一番嬉しかったのは、2024年にファーイーストカップで総合タイトルを獲得した菅平のレースですね。『この1本で人生が変わる』というか、人生で最も緊張したレースでした。ワールドカップ参戦の権利もかかっていたし、でもここでミスをすれば、全てが水の泡になってしまうという...。その状況で勝ち切ることができて、喜びというよりも安堵しましたが、最高でしたね」

――では、最後に競技における最終的な夢を聞かせてください。
「4年に一度しか機会がないので、オリンピックのメダルは確かに素晴らしい栄誉です。ただ、僕の最終的な目標は、ワールドカップのタイトル獲得だと思っています。シーズンを通して結果を残し続けなければ達成できない。本当に強い選手の証明ですからね。アルペンスキーヤーとしての最高の称号として、オリンピックのメダルより上のものだと僕は思います。そんな大きな目標を胸に、これからも競技に邁進していきたいです」
■プロフィール
2003年12月23日生まれ。北海道旭川市出身。幼少期から技術を磨き、北照高校時代に全国大会で頭角を現し、全日本ジュニア選手権SLで準優勝、FIS公認大会でも上位進出を果たす。東海大学に進んで国際大会でも活躍。全日本選手権での大回転優勝、海外大会でも上位入賞を果たし、ワールドカップにも参戦中。
文/渡辺敏樹 撮影/中川容邦



