乃木坂46・井上和がボカロへの愛を語る「自分にとって救いだった」

乃木坂46・井上和がボカロへの愛を語る「自分にとって救いだった」

2003年に発表され、今や1つの音楽ジャンルとして確立されたボーカロイドによる楽曲「ボカロ曲」。手軽な作曲と自由な表現が可能なことから、多くの「ボカロP」と呼ばれるクリエイターが世に出て、YOASOBIのAyaseや米津玄師、ヨルシカのn-bunaなど「ボカロP」出身の人気アーティストも少なくなく、音楽シーンを支える新たな土壌となっている。

誕生から20年が経ち、さまざまなタイプの楽曲が生まれて、ジャンルとして1つの成熟期を迎えた現在、MTVで「ボカロ」にフィーチャーした特別番組「Nagi Inoue (Nogizaka46) meets VOCALOID MUSIC -Special Live & Document-」が4月29日(水)に放送される。

同番組は、自他共に認める"ボカロ好き"の乃木坂46・井上和が「ボカロ曲」をパフォーマンスするスタジオライブに密着するもので、ライブ映像、収録までのメイキング映像に加え、"ボカロ愛"を語るインタビューを交えた特別番組。ライブでは、井上自身がセレクトした、ぬゆりの「命ばっかり」とpiccoの「Melty Magic」を披露する。

今回、収録を控えた井上にインタビューを行い、「ボカロ曲」を好きになったきっかけ、ライブの意気込みや選曲の理由、グループを離れた個人の仕事に対する思いなどを語ってもらった。

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――「ボカロ曲」を好きになったきっかけは?

「"明確なきっかけ"といえる出来事があったわけではないのですが、中学生の頃、人間関係で思い悩んでいた時に、『大丈夫だよ』とか『これから何でもうまくいくよ』といったポジティブな言葉をかけられるよりも、『辛いよね』って共感してくれるような、たとえ棘のある言葉でも無機質な世界が自分にとって救いだったので、その時期にどっぷりとハマっていきました」

――ほかの音楽ジャンルではなく、「ボカロ曲」だった理由は?

「音楽を聴く時に、メロディーを気にするか、歌詞を気にするかというのは人によると思うんですけど、私はどちらかというと歌詞の方が気になってしまうというか、言葉が体の中に入ってくるタイプなんです。耳で聴いて『この曲、リズムがいいな』って聴くよりも、聴いている時に入ってきたワードに『このフレーズの言い回しすてきだな』とか『この一節、刺さるな』とか、そういうので聴いちゃうので、自分の性格も含めて、自分の中で歌詞ってすごく大事なんです」

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――「ボカロ曲」の魅力はどんなところに感じていますか?

「好きになった当時、勝手に感じていた魅力は、"取り繕わない"というか、きれいごとじゃないところだと思っていて。人が歌うと、どうしても歌い手のバックボーンから、聴き手は『こういうふうなことを伝えたいのだろう』と考察してしまったり、歌い手の声から感情が多く伝わってしまう。それが、人が歌う楽曲の良さだと思うんですけど、『ボカロ曲』ってそれがないぶん、人が歌うのとはまた違った音の伝わり方があって、歌詞の言葉がよりストレートに伝わりやすくなっている気がしていて、それがすごく魅力だなと感じていました。

今はボーカロイドの技術もすごく上がっていて、『本当にボーカロイドが歌っている曲なのだろうか?』って分からないものまで出ていて、そういう良さ(ボカロならではの音の伝わり方)もありつつ、楽曲の中の自由度が高いところが聴いていてずっとサーカスの中にいるようなワクワクさせてくれるようなところが魅力だなと思っています」

――今回の番組出演を聞いた時の感想は?

「昨年、MTVさんの『MTV VMAJ』で『リレイアウター』(稲葉曇)を歌わせていただいた時も、ちょうど一人で歌う機会だったり、自分たちのグループの楽曲じゃない楽曲を歌う機会がすごく貴重で、"これからは自分が歌を歌う場面を自分で作っていかなきゃいけない"というフェーズに入ったタイミングでいただいたお仕事だったので、すごくうれしかったんです。そして、さらに今年もお話をいただけて、『まだ私が歌わせていただける場所があるんだ』ということに本当に感謝しましたし、今回も素直にすごくうれしかったです」

――番組出演について他のメンバーさんとお話などされましたか?

「『またボカロ歌うんでしょ?好きだからよかったね』『楽しみにしてるね』と同期のみんなが声をかけてくれたのでうれしかったです」

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――「命ばっかり」と「Melty Magic」を選んだ理由は?

「最初に『命ばっかり』は歌いたいなと思って。学生時代にすごくよく聴いていた曲で、思い入れもあったので選曲しました。そして、もう1曲選ぶ時に、『ボカロ曲は、自由自在な音楽だからこそなせる技というか、ポップな聴き応えのある音楽が魅力』だと思っているので、そういう魅力が詰まった曲も歌えたらいいなということで『Melty Magic』にしました。『命ばっかり』とのギャップもありますし、振れ幅をどこまで見せられるか、という自分への試練も含めて選ばせていただきました(笑)」

――どのように歌おうと思ってらっしゃいますか?

「『Melty Magic』はかわいい楽曲なのですが、今までグループの楽曲ではかわいい歌い方はしてこなかったので『どう歌ったらいいんだろう』と考えています。重みのある曲を歌うことは好きだったし、比較的グループのメンバーの中でもそういうパートを任せていただくことも多かったのですが、『Melty Magic』のようなポップなものは難しくて...(笑)。だから、できるだけボーカロイドの原曲に忠実に歌うことを意識して練習しています。

逆に『命ばっかり』は、電子音だからこそ伝わる魅力もありつつ、無機質な世界観の中でできているから『こちらもボーカロイドに合わせた方がいいかな』と悩みながらいろいろ練習していたのですが、練習を重ねていくうちに『こっちは結構人間らしさみたいなものを出しても伝わる曲なんじゃないか』というふうに思ったので、2曲とも違ったアプローチの仕方で歌えたらと思っています」

――「ボカロ曲」ならではの難しさは?

「『ボカロ曲』って息継ぎの場所がなくて大変です。人が歌っている楽曲は"ここで息を吸っているんだ"というのが聴いて分かるんですけど、『ボカロ曲』って息継ぎについて全く考えずにいっぱい音が入っているので、『果たして私はどこで息を吸ったらいいのだろうか』というのがあるんです。だから、結構ちゃんと計算しつつ、頑張って歌い続けなきゃいけないところもあるので、肺活量の面ではトレーニングしないといけないなと思っています」

――普段、カラオケなどで「ボカロ曲」を歌ったりしますか?

「というか、ほとんど『ボカロ曲』ですね。他のアーティストさんの曲もたくさん聴くようにはなったのですが、やっぱりボカロが好きで、今も情報を集めてます!

よく同期の菅原咲月ちゃんとカラオケに行くんですけど、私がボカロばっかり歌うものだから、彼女がいいと思った『ボカロ曲』を集めたプレイリストを作ったくらいで。カラオケで歌っていると、『これ何の曲?』『誰々さんの曲だよ』『プレイリストに追加しとくわ』みたいな(笑)。それくらいよく歌っています」

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――グループを離れての個人のお仕事についての思いは?

「いつもはみんなで背負っている乃木坂46の看板を、今度は一人で背負っていかなきゃいけないというプレッシャーというか、怖さがものすごくあります。今回は歌でのパフォーマンスということで、この番組がきっかけで乃木坂46に興味を持ってくださる方が一人でも増えたらいいなという思いもあるので、『グループのことを知ってくれたらいいな』というのが一番の目標であり願いです」

――全編自分だけの番組という喜びは?

「もちろんあるんですけど、性格的な問題なんですかね?怖いと思ってしまっています。いつもテレビの歌番組だったら20人前後でのパフォーマンスになるのですが、『その20人で成り立っている世界を一人でやってください』って言われたら、『画がもつのかな』とか『間をもたせなきゃ』とか、どんどん不安なことが増えてきちゃって。

そうなった時に、"どれだけ無意識のうちにメンバーを頼っていたか"に気付かされたり、それと同時に、自分がそう思っているように、きっとメンバーの中にもそう思ってくれている人がいるんだろうなっていうことにも気付いたりして、一人でお仕事することによってよりメンバーへの感謝が増えています」

――モデル業や俳優業でも活躍してらっしゃいますが、そちらの方ではいかがですか?

「今年は大河ドラマに出演させていただくのですが、すごくありがたいと思いつつも、ステージが大きいので、うれしさと怖さのせめぎ合いです(笑)。期待していただいているぶん、ちゃんとここでがんばらなきゃいけないな、と。グループから大河ドラマに出演させていただけるのも、2023年に久保史緒里さんが出られていたりと、先輩方が道を作ってくださったからで、私自身の力だけじゃないと思うので、そんな先輩方が作ってくださった道の重みをしっかり感じて臨もうと思っています」

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――オーディションで合格されたとのことで、もっと自信をもってもいいのでは?

「オーディションで選んでいただいたことはとってもうれしいのですが、(演技の)経験が多くないからこその"未来への投資"だと思っています。演技の実力だけでいったらまだまだですし、正直分からないことも多いですし。そんな中で、『乃木坂46の先輩たちは、こうお願いして、ここまでやってくれたから、同じグループの後輩のこの子もきっとここまでやってくれるだろう』という期待も含めてだと思っているので。

また、ジャンルの違うお仕事に挑戦するということで、演技の道一本でやってきた方がいらっしゃる中で、その中に足を踏み入れるというのは『しっかりその重みを感じて進まなければな』と思っています」

――先日、21歳のお誕生日を迎えられましたが、21歳の抱負は?

「今回の番組も大河ドラマも含めて、グループとしても個人としてもいろいろ挑戦させていただく1年として、ものすごく濃い時間を過ごすことになると思うので、だからこそ『グループのために頑張らなきゃ』という思いはものすごくあります。だけど、以前ファンの方に『グループのために頑張ろうとしてくれているのはすごく分かるけど、あなたのことを好きだよって言ってくれている人たちに、もう少し感情の矢印を向けてほしい』というふうに言われて、『本当にその通りだな』とハッとさせられて反省したことがあって...。

この4年間、『早く立派にならなきゃ』『グループのために力になれるメンバーにならなきゃ』と焦っていて、チャンスをいただく機会も多かったからこそ、ずっともがいていたような感覚だったので、『ファンの方にはちょっと寂しい思いをさせちゃっていたのかもしれないな』とすごく反省していて。

だから、21歳は、もちろんグループのために頑張るけど、私のことを好きだよって応援してくださる方のために何かできたらいいなと思っています」

――最後に番組をご覧になる皆さん、ファンの方々にメッセージをお願いします。

「今回は私の好きなこと、やりたいことをたくさん取り入れていただいたので、アイドルとしてもそうですけど、一人の井上和としての歌唱を楽しみにしていただけたらと思います。好きなものを大切に、一生懸命披露させていただきますので、温かい目で見ていただければと思います」

文/原田健 撮影/中川容邦

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PROFILE
2005年2月17日生まれ。神奈川県出身。2022年2月、乃木坂46に5期生として加入。2026年放送のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』に出演する。

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