TOMOOが国内初の野外MTV Unpluggedを終えた心境を語る「あの時間がもっとずっと続いてほしかった」
音楽・K-POP インタビュー
2024.11.10
数々の人気アーティストが歴史を刻んできた「MTV Unplugged」に、今最もホットなシンガーソングライターとして注目を集めるTOMOOが出演する。
国内初の野外公演、TOMOO初のアコースティックライブと初ものづくしで行われた今回のMTV Unplugged。日本制作50作目となるメモリアル公演を終えたTOMOOに、あらためて当時の様子を振り返ってもらった。
――MTV Unpluggedの話が来たときはどのような心境でしたか?
「"棚からぼた餅"というか自分にとってはすごく程遠い存在というイメージだったので、本当にまさかでした。でも、いただいたぼた餅を精一杯幸せな時間にしたいと背筋が伸びる気持ちでした」
――あらためてライブを振り返ってみてどうでしたか?
「あっという間に終わってしまった印象で、あの時間がもっとずっと続いてほしかったという思いは率直にすごくあります。東京と大阪の2回公演でしたが、それぞれの会場では雰囲気も空気感も全く違いました。普段は電子楽器をいっぱい使ったライブをしていますが、それを違う楽器だけで構成した時にイメージはどうなってしまうのか、エネルギーは保てるのかと最初は不安もありました。でも、実際に公演してみていろんな表現手段があるんだということも発見できて、新しい扉が開けたような充実した時間でした」
――初のアコースティックライブでしたが、観客との距離感や伝わってくる熱量など普段のライブとの違った良さは感じましたか?
「みんなが集中して聞いているというのはわかりましたし、コンサートみたいに静かにしていようみたいな意識や空気感は伝わってきました。でも、かしこまってキュッとなってしまっているのではなくて、静かな熱ですけど伝わってくる熱はむしろ際立っているのを漠然と感じました。お互いに集中していることで回路が繋がりやすくなる感じがありますが、そういう良さはあったと思います」
――ライブを通して特に印象に残っている場面はどこですか?
「『Present』ですね。今回は自分も演奏に加わってダブルピアノになりましたが、向かい合った兼松衆さんの演奏が、例えるなら外国の景色が見えそうになるほどピアノをすごく生き生きと弾いてくださって。この曲を書いたばかりのときって私もこういう景色や匂いをイメージしていたことを思い出して、ルーツ的というか古きよき景色が立ち上がってくるような時間だったのを覚えています」
――今回は国内初の野外開催のMTV Unpluggedでしたが、これまで誰もやっていないことにご自身が挑戦されるというのはどんな感じだったんでしょうか?
「音楽フェスなどで野外ライブをすることはありますが、ワンマンで野外ライブはやったことがなかったので、どんな感じの空気になるのかが想像つかなくて、当日を迎えるまではいろいろ妄想していました。ぼんやりとしたライブにはしたくないとは思っていましたが、野外という音楽以外にもいろんな音が聞こえる環境の中で、観客の気持ちをちゃんと引き付けられるかなとドキドキしていました」
――ライブ中には予期せぬトラブルもありましたか?
「結構ありましたね。鳥のヒャーみたいな声や飛行機が通り過ぎる音も聞こえてきたし、カナブンくらいのサイズの虫が目の前に飛んできて、思わず"わっ!"て言ってしまったり(笑)。普段のライブではなかなか経験できないことができたライブでした」
――セットリストからあえてこの曲を聞いてほしいと挙げるのであればどの曲でしょうか?
「個人的に絶対この曲はやるって決めていたのは『Lullaby to my summer』です。当初は1人で演奏してもいいかなと思っていたのですが、バンドアレンジしたバージョンも用意していただき、リハーサルで決めることになっていました。リハーサルでバンドアレンジを初めて聞いたらすごく美しくて、こんな景色があったのかと思いました。多分、もともと曲の奥にはあったのだと思いますが、自分ではたどり着かなかった、触れられなかった景色を立ち上げてもらって、その曲を演奏できたことは個人的にすごく幸せでした。音源化すらされていない曲ですが、私にとって実はすごく大切な宝物なので注目してもらえたら嬉しいですね」
――最後に視聴者の方にメッセージをお願いします。
「自分の音楽人生にとってもすごくスペシャルで宝石のような時間でしたが、それをまたじっくりと映像として見ていただけるということで、嬉しく思っています。その場で味わうライブももちろんいいですが、映像だからこそ見えるところや細かいところを、ぜひじっくりじっくり見てください。画面を通して伝わってくる空気感がきっとあると思うので、当時の様子を想像していただきつつ、楽しんでもらえれば。ライブに来てくださった方も舞台裏はこうなっていたのかと発見したりしながら見ていただけると面白いんじゃないかなと思います」
文/安藤康之 撮影/中川容邦
スタイリスト/Minoru Sugahara
ヘアメイク/ Chika Ueno