海外ドラマ好きをうならせる! 名優ロバート・デ・ニーロがドラマ初主演を務める社会派スリラー Netflixシリーズ「ゼロデイ」
海外ドラマ 見放題独占配信
2025.03.05
1974年公開の映画『ゴッドファーザー PART II』で演じた、若き頃のヴィトー・コルレオーネ役で第47回アカデミー賞助演男優賞に輝いて以降、歴史に名を刻む名優としてハリウッドの第一線で活躍し続けているロバート・デ・ニーロ。暗い情熱を秘めた男を見事に演じた『タクシードライバー』、大幅な肉体改造という渾身の役作りで第53回アカデミー主演男優賞を受賞した『レイジング・ブル』、自ら言葉を発することができない病気を患っている男性の運命を迫真の演技で表現した『レナードの朝』など、映画史に残る名作の数々に主演してきた。
老齢期に入って以降は、コメディ作品でも大活躍。中でも娘の将来の夫を見定める元CIAエージェントを演じた「ミート・ザ・ペアレンツ」シリーズや、有能なシニアインターンを軽やかに表現したアン・ハサウェイ共演作「マイ・インターン」などで、新たなファンを獲得したことでも知られている。
そんな映画界を主戦場に活躍してきた彼の、連続ドラマシリーズ初主演作となる「ゼロデイ」が、Netflixで世界独占配信中だ。
元検事でもあるジョージ・マレン(ロバート・デ・ニーロ)は、アメリカ合衆国大統領という責任の重い仕事を無事に務め上げ、退任後は規則正しくものんびりとした日々を過ごしていた。そんなある日、アメリカ国内で大規模なサイバーテロが発生。制御を失った地下鉄の暴走などで数千人が命を落とす大惨事に国中が混乱していた。
ソフトウェアなどの脆弱性を悪用したゼロデイ攻撃が行われたと推測される中、かつてのスタッフでもあるロジャー・カールソン(ジェシー・プレモンス)より、事故現場を訪れて復旧作業にあたっている救急隊員たちを応援してほしいというホワイトハウスからの要請が伝えられる。この行動をきっかけに、新設する大規模サイバーテロ事件の特別捜査委員会の舵取り役をミッチェル大統領(アンジェラ・バセット)に任命されたマレンは、第一線に復帰。しかし、捜査を進めていく過程で、自らの秘密や過去と向き合っていくことになる。
デ・ニーロが演じるのは、元検事という経歴を持つ前大統領。第一線からは退いており政治に携わる娘とは確執があるものの、国民からの人気は根強いという存在だ。未曽有のサイバーテロに不安を抱える国民を落ち着かせ、一致団結させるという役目を現大統領から担った彼が、ニューヨーク・マンハッタンの地下鉄での救出活動現場を訪れるシーンでは、暴動寸前の民衆を力強い声で勇気づける。その場面でのデ・ニーロの演技は圧倒的で、視聴者の心をマレン大統領のカリスマ性に魅了されるアメリカ全土の国民と見事にシンクロさせることに成功している。
物語が進むにつれ、サイバーテロにはロシアが関わっていること、ロジャーが、マレンの娘・アレクサンドラ(リジー・キャプラン)と特別な関係にあるだけでなく、事件前に株を空売りしていたなど訳アリな様子であることが明かされていく。その中で、マレンの見ていた世界と現実との間にギャップが生じていることも描かれ、ストーリーはどんどん先読み不能となっていくのだ。
衰えゆく肉体のせいなのか、それとも毎日服用している薬の副作用なのか。それともサイバーテロに関わる組織の陰謀なのか。さまざまな人々の思惑に翻弄されるマレンがたどる波乱の運命を美しい映像で描き出した社会派スリラーな本作。デ・ニーロは主演のみならず、エグゼクティブプロデューサーとしても作品に関わり、大規模ロケを敢行したハイクオリティーなドラマを見事に作り上げた。
マレンの妻を演じるジョアン・アレンやマレンと深い関係にあったスタッフ、ヴァレリー役のコニー・ブリットンなど、脇を固める顔ぶれも名優ぞろい。彼らとデ・ニーロによる迫真の演技が堪能できる上質なドラマは、目の肥えたドラマファンをうならせるに違いない。
文/中村実香