「マトロック」でキャシー・ベイツが見せた圧倒的な演技に引き込まれる【関根麻里】

関根麻里

関根麻里 (タレント)

タレント。幼少時からインターナショナルスクールへ通い、海外留学の経験を持つ関根麻里が、パラマウントプラスの海外ドラマからオススメ作品の見どころや魅力を語る。

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「マトロック」でキャシー・ベイツが見せた圧倒的な演技に引き込まれる【関根麻里】

こんにちは。関根麻里です。私が大好きなパラマウントプラスの海外ドラマを皆さまにご紹介する連載コラム第10回は、ハリウッドを代表する名優キャシー・ベイツが主演を務める、新感覚の法廷ドラマ「マトロック」です。

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(C)2024 Paramount Global

名門法律事務所でおばあちゃん弁護士が活躍!

本作は、1986年から9シーズンにわたってアメリカで放送された同名の人気ドラマを、主人公の性別を女性に変えたリブート版です。主人公は、75歳のベテラン弁護士マデリン・マトロック。夫を亡くして孫と二人で暮らす彼女は、再就職活動に苦戦する中、名門法律事務所ジェイコブソン・ムーアの会議に無断で潜り込むという型破りな方法と、圧倒的なコミュニケーション能力を駆使して、見事にアシスタントの職を勝ち取ります。

30年間、現場から離れていた彼女に対し、チームのリーダーであるベテラン弁護士オリンピアや、若手のビリー、サラたちは冷ややかな視線を向けます。しかし、彼女の長年にわたるキャリアと豊富な経験に基づいた知識、そして依頼人に真摯(しんし)に寄り添う温かい人柄が、少しずつ周囲の信頼を勝ち取っていくのです。しかし、ニューヨーク郊外のアパートで孫と暮らすマデリン・マトロックというのは、仮の姿。彼女がこの事務所にやって来た本当の目的は――。

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(C)2024 Paramount Global

名優キャシー・ベイツの圧倒的な演技力が光る!

全19話構成のシーズン1ですが、とにかく面白くて、一気に見てしまいました! 中でも最大の見どころは、主人公マディを演じるキャシー・ベイツの圧倒的な演技力です。彼女といえば、1990年公開の映画『ミザリー』での鬼気迫る演技により、アカデミー主演女優賞とゴールデングローブ賞主演女優賞(ドラマ部門)をW受賞した実力派。本作でも、見る者を引き込む演技を披露しています。

演じるのは、透明人間のように周囲から警戒も注目もされないシニア女性、マデリン・"マディ"・マトロック。実は非常に優秀な弁護士でありながら、あえて人畜無害な雰囲気をまとい、周囲を油断させるテクニックの持ち主です。状況を瞬時に判断し、自分がどのように振る舞うべきかを考え抜いた上で、時にはアクセントさえも変えるといった臨機応変ぶり。そんな難役をキャシー・ベイツは軽やかに、かつ説得力たっぷりに演じており、その表現力の豊かさに圧倒されました。そして、本作で第82回ゴールデングローブ賞のドラマシリーズ部門主演女優賞にノミネートされました!

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(C)2024 Paramount Global

マディの正体とは?第1話で明かされる衝撃の真相

第1話のクライマックスでは、名門法律事務所での初日を終えたマディが、バスに乗って帰路につきます。しかし、次のバス停で下車すると、そこには彼女を「キングストン様」と呼ぶ運転手付きの車が待っており、マディはその車に乗り込みます。やがて到着したのは、立派なお屋敷。出迎えたのは、職場では「博打(ばくち)好きの浮気男で、もう死んだ」と語っていた夫。そして、反抗期の孫だと説明していたアルフィも、実際はおばあちゃんに元気よく抱きついてくる素直な少年でした。マディが職場で語っていた話は、全て作り話だったことが分かり、彼女がジェイコブソン・ムーアに潜り込んだ本当の目的も明かされる演出には、思わず引き込まれました。

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(C)2024 Paramount Global

マディのターゲットは、ジェイコブソン・ムーアのトップであるチェック柄のネルシャツがトレードマークのハワード・シニア、その息子ジュリアン、そしてジュリアンの妻オリンピアです。3人のうちの誰かが、ある重要な書類を隠蔽(いんぺい)したことによりオピオイド規制が遅れ、マディの娘も命を落としてしまったことから、誰がいつ、何を知っていたかを突き止め、隠蔽した人物を刑務所に送る。それが、マディがこの法律事務所に身分を偽って潜り込んだ真の目的です。表向きは弁護士として働きながら、その合間を縫って独自に捜査を進めていきます。

作中で扱われる「オピオイド」は、手術後やがんの痛みを和らげる強力な鎮痛薬として知られていますが、過剰摂取による依存症が深刻な社会問題となっており、現実のアメリカでも大きな議論を呼んでいます。マディが法廷で関わる裁判も、警察による捜査ミスや、企業の利益優先による隠蔽工作など、現代社会のリアルな問題が数多く盛り込まれており、それが物語にいっそうの説得力と重みを与えています。

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(C)2024 Paramount Global

登場人物たちの変化や成長、人間模様にも注目!

マディをはじめ、登場人物たちがとても魅力的なのも本作の大きな見どころです。特に印象的なのが、マディのターゲットの一人でもあるオリンピア。出世欲の強いクールなエリート弁護士として登場しますが、マディと出会ったことで、少しずつ人間味あふれるキャラクターへと変化していきます。アシスタントへの接し方も徐々に柔らかくなり、職場での振る舞いに温かみが増していきます。

そんなオリンピアとマディが、立場や年齢の違いを超えて、女性同士の友情を育んでいく過程には深い感動がありました。また、アシスタントのビリーとサラも、マディとの関わりの中で、自分の限界に挑みながら成長していく姿が描かれています。彼らが弁護士としてだけでなく、一人の人間としても大きく変わっていく姿には、思わず胸が熱くなりました。

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(C)2024 Paramount Global

中でも私の一番のお気に入りキャラは、マディの孫アルフィです。くるくるとした巻き毛に、愛らしい笑顔が印象的な男の子ですが、実はテクノロジーにめっぽう強い頼れる存在。マディの就職活動に必要な経歴サイトを作成したり、彼女の捜査を手伝ったりと、優秀なサポーターとして大活躍します。

幾度となくマディにピンチが訪れますが、アルフィや、元大学教授である夫の協力を得て越えていく展開も見応えたっぷりです。そしてシーズン1の最終話では、新たな真実が次々と明かされ、「えっ、ここで終わり?」「この先どうなるの?」と思わず声が出てしまうような衝撃のラストが待っています。しかし、シーズン2の制作が決定しているとのことなので、早く続きが見たくて仕方ないです。今後も、皆さんと一緒にマディの活躍をハラハラドキドキしながら見届けたいです。

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