SNS上で実際に起こりそうな出来事がエピソードの題材になっていて今っぽい「iCarly(iカーリー)」【関根麻里】
海外ドラマ 見放題連載コラム
2025.05.30

こんにちは。関根麻里です。私が大好きなパラマウントプラスの海外ドラマを皆さまにご紹介する連載コラム、第8回は、2007~2012年にかけて世界的な人気を誇ったティーン向けコメディーのリブート版で、当時のメインキャストが再結集して贈る「iCarly(iカーリー)」です。
大人になったカーリーたちの新たな物語
本作は、動画配信サイトが今ほど普及していなかった時代に、自分のチャンネル「iCarly.com」を立ち上げて人気者になったティーンエイジャーのカーリーと、その仲間たちの日常を描いたオリジナル版「iCarly(iカーリー)」の10年後を描きます。オリジナル版の最終回では、アメリカ空軍に所属する父と共にイタリアへ旅立ったカーリー。物語はそれから10年後、カーリーがおうちデートの際に彼氏のボーに、カップルチャンネルを開設しようと誘うところから始まります。
カーリーの新たなチャンネル立ち上げには、兄のスペンサーや、かつて「iCarly.com」でカメラマン兼プロデューサーを務めていた幼なじみのフレディも協力。隠し撮り用のスマートフォンを固定できるオブジェを作るなど、アイデアを出して盛り上げます。しかし、配信開始早々、カーリーはボーから別れ話を切り出されてしまいます。それから1カ月、失恋のショックが癒えないまま、アーティストとして活動するスペンサーの新作発表パーティーに顔を出したカーリーは、昔同じキャンプに参加していたルークと再会。新たな恋の予感に、カーリーは胸をときめかせます。
私はオリジナル版を見ていなかったのですが、登場人物たちの個性や関係性がすぐに分かる構成になっていて、自然と物語に入り込むことができました。特に、スペンサーと他のキャラクターとのテンポの良いやりとりや、体を張ったコミカルな演技の数々は、とても面白かったです。このドラマは「シットコム」と呼ばれるジャンルです。「シットコム」とは、「situation comedy」の略で、ストーリーを重視し、登場人物や場面設定が固定された、一話完結の展開が特徴のドラマです。セットを組んだスタジオでキャストが演じ、その演技に合わせて観客の笑い声が入るスタイルは、「奥さまは魔女」や「フルハウス」、「フレンズ」などの人気作品とも共通しています。笑い声のタイミングから、海外の人たちがどんなシチュエーションを面白いと思うのか知ることができるのも、シットコムならではの魅力だと思います。
物語を彩る個性豊かなキャラクターたち
主人公のカーリーは、自分の気持ちに真っすぐな26歳のインフルエンサー。正直過ぎるが故に失敗することもあり、別れたばかりのボーが新しい彼女とカップルチャンネルを開設すると聞いて、まだ付き合ってもいないルークを「彼氏」と言い張り、自分もチャンネルを始めると強がってしまう。そんなちょっぴり見栄っ張りな一面も持つ女性です。でも、仲間の前では素直に反省できる、ナチュラルでとても魅力的なキャラクターだと感じました。そんなカーリーを演じるのは、オリジナル版から引き続きミランダ・コスグローヴ。映画『スクール・オブ・ロック』でクラス委員のサマーを演じていたことでも知られる彼女は、俳優としてだけでなくオープニングテーマを歌い、さらにはエグゼクティブプロデューサーとして制作にも参加するなど、その多才ぶりが光っています。
私のお気に入りキャラクターは、カーリーの兄のスペンサー。登場するたびに何かしらやらかしては笑いを誘う、憎めない存在です。妹のカーリーはもちろん、フレディをはじめ仲間たちへの愛情も深く、仕事のアートにも真剣に取り組んでいます。でも、どこか抜けていて、それがまた面白いんです。そんなスペンサーを演じるのは、ジェリー・トレイナー。初登場シーンから裸エプロン姿だったり、顔にクリームを塗りたくられたりと、体を張った演技でドラマを盛りあげています。また、フレディ役のネイサン・クレスは、二度の結婚に失敗し、血のつながらない養女のミリセントを母親と共に育てているという、成長に従って新たな設定が加わった役どころを、愛嬌たっぷりに演じています。
そして、今回のリブート版から新たに加わったのが、カーリーのルームメイトのハーパーと、フレディの娘ミリセントです。ハーパーは、自分のセクシュアリティをオープンにし、明るくてエネルギッシュな性格の持ち主。ファッションに敏感で、自分らしく生きることを大切にしている、とても魅力的な女性です。一方のミリセントは、身近にいるカーリーやハーパーの影響もあってか、同世代の子どもたちよりも精神年齢が高め。計算高くて抜け目がなく、欲しいものがあれば父親のフレディをうまく操って手に入れるなど、大人顔負けの立ち回りを見せるところが、とても面白いキャラクターだと思います。
SNS時代に生きる若者たちのリアルを描く
登場人物それぞれのキャラクターが際立っていて、その掛け合いがとにかく面白い本作。エピソードの題材も、SNS上で実際に起こりそうな出来事をベースにしていて、とても今っぽい内容なんです。特に印象に残っているのは、カーリーがスペンサーの作ったミートボールを吐き出した時の顔がネットミームになってしまい、ハーパーがその顔をプリントしたTシャツで商売を始める第3話「フェイク謝罪」、ネガティブなコメントばかり書き込むアンチとカーリーが直接対決する第4話「アンチとの闘い」、カーリーたちが即効性のあるサプリメントに夢中になる第8話「癒しのサプリ」です。ネットでの炎上や自己ブランディングなど、現代のリアルなテーマをユーモアたっぷりに描いた1話完結型のドラマなので、どの話から見ても楽しんでいただけると思います。
第1シーズン以降も、個性豊かで魅力的なサブキャラクターたちが続々と登場する本作。カーリーやスペンサーをはじめ、登場人物たちのこれからの展開がますます気になります。皆さんもぜひ、私と一緒に彼らの物語を見届けていきましょう。