伝説的ライブの裏側から見るglobeのエンターテインメントへのこだわり

伝説的ライブの裏側から見るglobeのエンターテインメントへのこだわり

globeが1999年に開催したコンサートツアーの舞台裏に密着したドキュメンタリー映像「BEHIND THE SCENE globe tour 1999 Relation」が、約25年ぶりに放送されることが決定した。

音楽ユニット"globe"は、1995年8月9日にシングル「Feel Like dance」でデビュー。オリコン初登場6位(最高位3位)を記録し、衝撃的なデビューを飾った。TM NETWORKとして、trfなどのプロデューサーとしてJ-POPシーンをリードしていた小室哲哉によるユニットということで期待が高まり、デビュー時の注目度はかなりのものだった。元々は「Orange」というユニット名で、ボーカルのKEIKOとラップのMARC PANTHERの2人組の予定だった。しかし、KEIKOのボーカル力やその可能性を考え、小室自身もメンバーとして加わり、3人組としてスタートを切った。2枚目のシングル「Joy to the love (globe)」はオリコン初登場1位を記録し、1996年元日に発売された4枚目のシングル「DEPARTURES」はJR東日本「JR SKISKI」のCMソングに起用され、ダブルミリオン(200万枚)超の大ヒットとなった。さらに同年3月発売の1stアルバム『globe』の売上は400万枚を超え、勢いは増すばかり。

90年代後半、この頃がCDが一番売れた時代と言われており、小室哲哉がプロデュースしたアーティストの作品がミリオンヒットを連発。globeはその中でも先頭を走っていた。ツアー「globe tour 1999 Relation」は、1998年12月にリリースされた4thアルバム『Relation』を携えて1999年に行われた全国ツアーで、30万人もの観客動員数を記録。それまでのヒット曲を並べた既成概念にとらわれたライブではなく、様々な常識やフレームの破壊を目指すものだった。"恐怖"をテーマにして『悪夢』を表現するためにオーディエンスを驚かせる斬新な仕掛けやセットを用意し、ストーリー性のある構成で、"ライブ"や"コンサート"という範疇(はんちゅう)を超越し、エンターテインメント性の高い、一大音楽ショーに昇華させた。

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ステージのセットや仕掛けのクオリティの高さは、手がけたスタッフを知れば納得するはず。ステージ製作を担当したのは、マイケル・ジャクソンのライブセットなども手がけたジョン・マッグロー。そして大掛かりな仕掛けはマーク・フィッシャーが担当。彼はザ・ローリング・ストーンズやU2、ピンク・フロイド、エルトン・ジョン、ジャネット・ジャクソンといった大掛かりなセットでのライブに定評のあるアーティストやバンドのステージを手がけてきたステージ・デザインの巨匠。超一流のスタッフ陣が関わり、globe史上最もコンセプチュアルで、完成度の高いツアーとして、J-POPシーンの歴史の中でも大きなターニングポイントとなった。

「BEHIND THE SCENE globe tour 1999 Relation」はその裏側に密着したドキュメンタリー番組として1999年に放送されたもの。冒頭で、小室、KEIKO、MARCがソファに座りながら、フリップを使ってツアーのコンセプトを説明する。「テーマ」が"恐怖&フレームの破壊"であることに始まり、「モチーフ」は"悪夢を観客に見せる"ということ、その理由やアプローチの仕方をしっかりと解説。そして、大掛かりなステージの設営の様子が映し出される。同時に、舞台監督をはじめ、ステージに関わる重要なスタッフ陣の証言(インタビュー)が盛り込まれる。ステージ上ではglobeのメンバーがまるでホラー映画、あるいはホラーの舞台作品のようなエンターテインメントショーを繰り広げ、ステージの下ではたくさんのスタッフが仕掛けを動かしていく。

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番組内で「裏側とか見ていただいて、2人(KEIKOとMARC)から説明を聞いてもらうと、お客さんもいろんな角度からいろんな楽しみ方ができるのではないでしょうか」と小室が話しているように、超スペクタクルなステージだけでも、もちろん満足度100%超だが、この番組を見ることによって、その楽しみ方が何倍にも増え、また違う凄(すご)さを感じさせてくれる。常識や既成概念を超えてglobeが追い求めた真実をより深く知ることのできる本作は全音楽ファン必見だ。

文=田中隆信

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