正統派からコメディーまで！橋本環奈が見せる演技の振り幅

圧倒的な透明感とナチュラルな演技が魅力の橋本環奈。2016年、映画『セーラー服と機関銃 －卒業－』で初主演し、瞬く間に国民的な人気を獲得。着実にキャリアを重ね、日本を代表する俳優の一人に成長し、2024年後期のNHK連続テレビ小説「おむすび」で主人公・結役を演じることが決定するなど、さらなる飛躍が期待されている。そんな彼女の魅力は、王道のヒロインから型破りな女性まで表現する演技の振り幅の広さだろう。

「トクメイ！警視庁特別会計係」

2023年放送の「トクメイ！警視庁特別会計係」では、ナチュラルメイクとシンプルなファッションで、経費削減の"特別命令（トクメイ）"を背負って本庁からお荷物所轄の万町署に派遣された、特別会計係の女性警察官・円を演じた。生真面目に自分の仕事を全うしようとするあまり、刑事課強行犯係の刑事・湯川（沢村一樹）と衝突する円。彼女は、警務課の課長・須賀（佐藤二朗）の「一番の経費削減は事件の早期解決」というアドバイスの下、「お金」という角度で事件を捉えて独特な方法で解決に導いていく。そんな円を橋本は、彼女の持ち味でもある豊かな表情とコミカルなアクションで、親しみやすい主人公として作り上げている。

「王様に捧ぐ薬指」

同じく2023年放送の、山田涼介との共演で話題を呼んだドラマ「王様に捧ぐ薬指」では、"誰もが認める絶世の美女"という役柄に、その演技とビジュアルで圧倒的な説得力を与えた。橋本が演じる主人公・綾華は、その容姿端麗さで数々の男性を魅了してしまい、周囲から誤解され妬まれることも多く、それが原因で職を転々としていた新人ウェディングプランナーだ。自分の身と心を守るため、どんな相手にでも遠慮なく思ったことを言う強気な綾華を、橋本が魅力的に演じている。女王様のようなほほ笑みをはじめ生き生きとした表情や、まばゆいばかりに美しいウェディングドレス姿は必見だ。そして、家族のために好きでもない御曹司・東郷（山田）と結婚生活をおくる中で、次第に彼を愛するようになる綾華の心の変化を、繊細な視線の動きで表現する演技力も見逃せない。

「弱虫ペダル」

さまざまな人気コミックの実写映画版でも、作品の世界観を再現できる存在として引っ張りだこの橋本。サイクルロードレースに青春を懸ける男子高校生の姿を描いた2020年公開の『弱虫ペダル』では、千葉県立総北高等学校自転車競技部のマネージャーとして、主人公・坂道（永瀬廉）らを支える女子高校生・幹をナチュラルな存在感で体現。『キングダム』シリーズ（2019～2024）では、フクロウのような姿をした、今は亡き山民族の末裔（まつえい）・河了貂（かりょうてん）を愛らしい動きを交えて好演。殺伐とした物語に癒やしをもたらしている。また、ドラマの劇場版として2023年に公開された『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』では、冷徹な犯罪者という、彼女が持つポジティブなイメージを覆す役どころを印象的に演じている。

正統派ラブストーリーからコメディーまで、さまざまなジャンルの作品で、常に鮮烈な印象を残す橋本環奈。役者としてますます飛躍すること必至な彼女から、今後も目が離せない。

文／中村実香