かけがえのない成功と評されたソン・スンホンの新境地「プレーヤー~華麗なる天才詐欺師~」【古家正亨連載】
韓国・アジアドラマ 連載コラム
2025.07.11

古家正亨 (ラジオDJ/イベントMC)
ラジオDJ、イベントMC。 K-POPなどの「韓流」カルチャーを20年以上にわたり日本に紹介してきた古家正亨が、毎月オススメの韓流コンテンツを紹介。

古家正亨 (ラジオDJ/イベントMC)
ラジオDJ、イベントMC。 K-POPなどの「韓流」カルチャーを20年以上にわたり日本に紹介してきた古家正亨が、毎月オススメの韓流コンテンツを紹介。
韓流スター第1世代として日本でも高い支持を誇る俳優、ソン・スンホンさん。先日、1年ぶりに行われた彼のファンミーティングでMCを務めました。個人的には、7、8年ぶりにお会いしたんですが、昔と全く変わらないんです。自分よりも年下のスンホンさんですが、そのダンディズムあふれる魅力に、「こんな風に年を重ねたかったなぁ」と、後悔するほど。その7、8年前にお会いしたというのが、今回ご紹介するドラマ「プレーヤー~華麗なる天才詐欺師~」の撮影地訪問だったんです。しかも昨年、約6年の時を経てシーズン2が放送されたばかりで、今回は、この作品を紹介する運命だったんだと思った次第です。
(C) STUDIO DRAGON CORPORATION
ソン・スンホンさん演じる天才詐欺師のハリと、イ・シオンさん演じるハッカーのビョンミン、テ・ウォンソクさん演じるファイターのジヌン、チョン・スジョン(クリスタル<f(x)>)さん演じるドライバーのアリョンという、それぞれの才能に長けた強者たちが集結し、詐欺グループ「プレーヤー」を結成。といっても、彼らは社会悪の詐欺ではなく、むしろ社会悪が違法に集めた金を狙う詐欺なんです。ですが......「詐欺は詐欺」と、そんな彼らに検事であるキム・ウォネさん演じるインギュが目をつけます。もちろんインギュは、彼らが"正義の味方(!?)"であることも理解しているため、検察への協力の代わりに、彼らの詐欺には目を瞑ります。しかも、ハリがなぜこのような行動を取るのかというと、金が欲しいだけではない、ある"特別な理由"があったんです。
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韓国ドラマの真骨頂とも言えるそのストーリーラインは、まさに「必殺仕事人」シリーズのようで、世の腐敗を成敗する闇の主人公達が、財閥や政界、反社会的勢力など、一般人が普段不満を抱えながらも、相対することのできない組織や人をこれでもかというぐらいにバッサリと斬っていき、その爽快感によって、代理満足を得られる構造になっています。
ただ、このドラマの面白さはそれだけではありません。中心となるプレーヤー4人の演技のアンサンブルと、ハリが詐欺師となった根本的な理由に迫っていくサスペンス要素にあります。1話ごとにその真実が徐々に明かされていくので、どうしても途中でリタイアできない展開と、それぞれの得意分野に長けたメンバーが、互いをリスペクトし強い絆で結ばれていく過程をコミカルに描いていくんです。そう、シリアスとコメディーのバランスが実にうまく取れていて、飽きさせる隙を与えないというこのドラマの構成に、ハマる人が続出したわけです。
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俳優さんには、必ずといって良いほど、その人を象徴する当たり役というものがありますが、本作でソン・スンホンさんが演じた天才詐欺師のカン・ハリというキャラクターは、ここ数年の間に彼が演じてきた役の中でも、特に秀でた魅力があると思います。端正なルックスを持ち、誰もが信じてしまう巧妙な話術と頭脳を持つハリを、いったい彼以外の誰が演じられるでしょうか。このドラマが視聴者から支持され、シーズン2の制作にまで繋がったのは、そんなソン・スンホンさん演じるハリというキャラクターに魅力があったからというのも、大きな理由でしょう。
シチュエーションコメディーの「男女6人恋物語」で俳優デビューをしたのが1996年。その後、2000年に放送されたユン・ソクホ監督の四季シリーズ「秋の童話」に出演し、不動の人気を獲得してからはや四半世紀。正統派イケメンであるが故に、思い切りはしゃぐような明るさを全面に出す役を演じることは少なかったと思うのですが、今回のハリ役は、彼のこれまでの経験値を活かしながら、彼が得意とも言える、何らかの影を感じさせる面と、そして"ジワる"明るさを兼ね備えた、まさに大人の男だからこそ演じられるキャラクター作りに成功しているんです。韓国国内でもメディアからこのドラマを通じてスンホンさんは「この復帰は、かけがえのない成功となった」と評されたほど。
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そんな彼と絶妙なケミ(ケミストリー=化学反応の意)を見せてくれるのが、天才ハッカーのイム・ビョンミンを演じるイ・シオンさん。バラエティ番組「私は1人で暮らす~シングルのハッピーライフ~」を通じて、誰からも愛されるキャラクターで国民的スターとなったシオンさんが、優れたバラエティ感覚を活かし、スンホンさんとのコミカルなキャッチボールを展開。この2人のケミを見るだけでも、このドラマの価値はあるほど。先ほど紹介したドラマのロケ地訪問は、ちょうどこの2人が車に乗ったシーンを撮影していた最中で、現場でも2人の談笑する姿は、見ているこちらまでほほ笑ましく感じるほどでした。
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重すぎず、軽すぎない、絶妙な感覚とテンポ感で、見る者を最後まで全く飽きさせない。でも、見終えた後に日常に対して不信感を抱くほど、我々の見えないところに、多くの社会悪が存在することを認識させられるこのドラマ。普段なかなかストレスを発散できず、悶々と暮らしている人には爽快感を与えてくれ、そうでない人には「プレーヤー」のような、小さな"街の正義"がきっと自分の周りにもいるのではと感じさせてくれる。ただ楽しいだけではない、しっかり教訓を残してくれることが、時を超えて、待望の続編へと繋がっていったのではないでしょうか。シーズン2も好評を博したようで、ファンミーティングの際に、スンホンさんに話をうかがったところ、キャスト陣は第3作も期待しているとのこと。そういう意味でも、まだ見ていない方は、まずはこの第1作から見てほしいと思います。