イケメンスターからカメレオン俳優へ...ソン・ジュンギが一人二役に挑んだ「財閥家の末息子~Reborn Rich~」
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2024.08.14
第4次韓流ブームといわれる現在の韓国ドラマ人気は、「愛の不時着」(2019年)、「梨泰院クラス」(2020年)のヒットから始まった。「冬のソナタ」(2002年)の第1次韓流ブーム、「美男<イケメン>ですね」(2009年)の第2次韓流ブームは女性ファンに支えられていたが、現在のブームは、コロナ禍のステイホームによる男性のファンの急増が特徴といえるだろう。そんな事情もあって、韓流ドラマの主流もかつてのラブコメから、より社会事情を反映させた骨太な作品のヒットが目立つ。また近年のドラマヒットは、地上波よりも制作予算の高いNetflixやケーブルテレビ局など非地上波から多く生まれているのも特徴だ。
2022年に韓国のケーブルテレビ局・JTBCで、初回視聴率6.1%でスタートしながら、その面白さで最終回に26.9%という高視聴率をたたきだし、「夫婦の世界」(2020年)の28.4%に次ぐJTBC歴代視聴率2位に輝いたのが、ソン・ジュンギの最新主演ドラマ「財閥家の末息子~Reborn Rich~」だ。
「財閥家の末息子~Reborn Rich~」(C) Chaebol Corp. all rights reserved
韓国ドラマの代表的なテーマでもある財閥一家のドロドロの争いを描いた作品だが、そこにタイムリープ要素が加わっているのが新しいところ。この作品で、ソン・ジュンギは一人二役を演じた。1人は貧しい家に生まれ高卒で名門スニャングループに入社し、群を抜いた忠誠心で財閥オーナー一族のリスクヘッジに務める未来資産チーム長のユン・ヒョヌ。そしてもう1人が、ユン・ヒョヌが仕える財閥家の末孫、チン・ドジュンだ。
「財閥家の末息子~Reborn Rich~」(C) Chaebol Corp. all rights reserved
2022年、オーナー家のマネー・ロンダリングのために飛んだ海外で罠にはめられ殺害されたユン・ヒョヌは、目覚めると1987年のオーナー家の末孫、小学生のチン・ドジュンになっていた。2度目の人生を生きるチン・ドジュンは、ユン・ヒョヌ時代に経験した社会事象の記憶を武器に、絶対的権力で君臨する財閥創業者チン・ヤンチョル会長(イ・ソンミン)の信頼を得ていく。
「財閥家の末息子~Reborn Rich~」(C) Chaebol Corp. all rights reserved
経済センス抜群のチン・ドジュンと、会長の息子たちとの財閥継承をめぐるマネー戦争は、経済ドラマとしてもスリリング。大統領選挙やIMF危機など、史実とリンクした内容は共感度も高い。そこにユン・ヒョヌを殺した犯人捜しが加わり、サスペンスや復讐劇としてのハラハラも上級だ。
2役を見事に演じきったソン・ジュンギ。制服を着た高校生からカジュアルな服装の大学生、そして工場労働者やサラリーマンから財閥御曹司まで、さまざまな設定の彼が見られるのも眼福。
「トキメキ☆成均館スキャンダル」Licensed by KBS Media Ltd.(C)RaemongRaein
そんなソン・ジュンギのブレイクのきっかけを作ったのが、ドラマ「トキメキ☆成均館スキャンダル」(2010年)だ。男性と偽り、女子禁制の成均館(朝鮮時代の最高教育機関)に入学したキム・ユニ(パク・ミニョン)を中心に、イケメンエリートたちが一つ屋根の下でハラハラドキドキの同居生活を送りながら、夢と友情を育み、恋を通して成長していく姿を描いたラブコメ作品。ソン・ジュンギは美しい韓服姿で「女性が林のように群がる=女林(ヨリム)」というあだ名を持つ天下のプレイボーイ、ク・ヨンハを演じた。パク・ミニョンを筆頭に、「成均館花の4人衆」ユチョン、ユ・アイン、ソン・ジュンギの主要キャスト全員がこの作品でブレイクし、第2次韓流ブームで「成均館シンドローム」を巻き起こした名作だ。
以降、『私のオオカミ少年』(2012年)、「優しい男」(2012年)、「太陽の末裔 Love Under The Sun」(2016年)などラブロマンス作品で多くの女性をキュンキュンさせてきたソン・ジュンギだが、近年は「ヴィンチェンツォ」(2021年)、「財閥家の末息子~Reborn Rich~」、『ロ・ギワン』(2024年)、そしてこの7月26日より公開になる映画『このろくでもない世界で』など、社会の闇やノワールを描いた泥臭い作品に挑戦している。「財閥家の末息子~Reborn Rich~」では、大人の俳優として成長したソン・ジュンギだからこそ演じ分けられる幅広い年代の演技に注目してほしい。
文/坂本ゆかり