中村倫也、変幻自在の魅力!「石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー」「この恋あたためますか」などで見せた演技の振り幅

中村倫也、変幻自在の魅力!「石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー」「この恋あたためますか」などで見せた演技の振り幅

色気のある独特の声と癒やし系の顔立ちに加えて、どんな役でも器用にこなす演技の幅広さで、カメレオン俳優と称されることも多い、中村倫也。芸能生活10周年の2014年に『ヒストリーボーイズ』で舞台初主演を果たし、同作で読売演劇大賞の優秀男優賞を受賞するなど、演技派俳優としての地位を確立していく。2018年には連続テレビ小説「半分、青い。」で個性的なキャラクター・朝井正人を演じ、一躍脚光を浴びた。

シリアスもコミカルも、多彩な表現力で躍進!

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「ホリデイラブ」TELASAで見放題配信中
(C)原作・こやまゆかり漫画・草壁エリザ・DeNA/テレビ朝日・MMJ

中村の演技力が広く注目されるきっかけとなったのは、2018年放送の「ホリデイラブ」だろう。仲里依紗主演の恋愛サスペンスで、中村は彼女が演じるヒロインの夫・純平(塚本高史)に妻を奪われる井筒渡役を熱演した。井筒は異常なまでに妻・里奈(松本まりか)を束縛し、浮気相手の純平に暴力を振るったり、慰謝料を要求したりと、エキセントリックで攻撃的な性格。一方で、自らの社会的地位を誇り、他人を見下す傲慢(ごうまん)な一面も持ち合わせている。妻に見限られてもなお、一途に愛し続けるという複雑な内面を持つキャラクターだ。中村はこの難役を、細やかな芝居で見事に体現。尊大な態度でヒロイン夫妻を罵倒するシーンでは強烈な存在感を放ちつつ、その裏に潜む孤独や弱さをさりげなくにじませる演技で、視聴者に鮮烈な印象を与えた。

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「初めて恋をした日に読む話」
(C)持田あき/集英社・TBS・K-Factory

2019年放送の深田恭子主演の大学受験を絡めた恋愛ドラマ「初めて恋をした日に読む話」では、恋愛スキルは最下層な予備校講師・春見順子(深田)と、不良高校生・由利匡平(横浜流星)が東大合格を目指す姿を描く中で、中村は重要な役どころで物語に深みを与えた。中村が演じたのは、順子の高校時代の同級生で、現在は匡平の担任教師・山下一真。かつては不良だったが、現在は落ち着いた大人の男性に。順子への想いを再び募らせつつ、彼女を温かく見守る。挫折や苦しみを知る男の余裕、自虐を交えたユーモア、そしてさりげない気遣い、一真は"モテる男"の典型だが、どこか不器用で人間味にあふれている。そんな複雑な人物像を、中村は自然体で表現。飄々(ひょうひょう)とした立ち振る舞いの中ににじむ色気と優しさ、そして女性にとって"危険な香り"をまとった存在感は、まさに彼の真骨頂と言えるだろう。主演ではなくとも、作品の魅力を引き立てる存在として、強い印象を残している。

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「この恋あたためますか」

2020年には「美食探偵 明智五郎」で主演を務め、主演作が本格的に増え始める。同作で中村が演じたのは、卓越した推理力と美食へのこだわりを併せ持つ、奇抜な装いの私立探偵・明智五郎。中村にとっては、それまでにないクセの強いキャラクターであり、コミカルさとシリアスさが混在する役を自在に演じ分け、新たな魅力を開花させた。続く「この恋あたためますか」では、森七菜演じるヒロインの相手役を務めた。中村の役どころは、アイドルの夢破れたコンビニアルバイト・井上樹木(森)と共にスイーツ開発を手掛けるコンビニ本社の社長・浅羽拓実。東大卒のエリートで、外資系ネット通販会社「エクサゾン」から出向して社長を務めている。仕事においては極めて合理的かつ冷徹で、スイーツ開発に情熱を注ぐ樹木とは当初ぶつかり合う。しかし、プロジェクトを共に進めるうちに少しずつ打ち解け、やがて互いに惹かれ合っていく。冷たく見えるが実は繊細で情に厚い、そんな浅羽の内面を、中村は静かな表情の変化や抑えた演技で丁寧に表現した。独特の声のトーンと柔らかなまなざしが、浅羽という人物の人間味を際立たせる。冷静さと温かさのギャップを巧みに演じたことで、本作は中村の演技の幅広さを、改めて世に知らしめる作品となった。

等身大からユニークなキャラまで変幻自在!

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「石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー」

2022年には、「石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー」で主人公の弁護士、「羽男」こと羽根岡佳男を演じた。東大卒パラリーガルのヒロイン・石田硝子(有村架純)との凸凹コンビによる法律ドラマで、とにかく羽根岡の人物造形がユニークだった。高卒ながら、見たものを写真のように記憶できる「フォトグラフィックメモリー」の持ち主で、この特異な才能を生かして司法試験に一発合格したという異色の経歴を持つ。羽根岡は頭の回転も速く、基本的には軽妙な性格。しかし、ひとたび予期せぬ出来事に直面するとパニックに陥るという"弱さ"を抱えており、弁護士としての資質にやや難があるにもかかわらず、理想の弁護士像に憧れてつい背伸びをしてしまう"痛々しさ"が、どこか愛らしくもある。そんな複雑なキャラクターを、中村はコミカルとリアリティーを絶妙なバランスで織り交ぜながら、自然体で演じ切った。

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「ハヤブサ消防団」TELASAで見放題配信中
(C)池井戸潤「ハヤブサ消防団」/テレビ朝日

2023年に放送された話題作「ハヤブサ消防団」でも、中村倫也は主演として存在感を発揮した。彼が演じたのは、作家・三馬太郎。都会から離れ、静かな暮らしを求めて山あいの「ハヤブサ地区」へと移住した三馬が、地元の消防団に加入したことをきっかけに、連続放火や住民の不審死といった不可解な事件に巻き込まれていく。謎めいた舞台と複雑かつ壮大な物語にあって、主人公の三馬は謎解き役だが、視聴者と同じ視点の狂言回し的な役割も担う。クセの強い登場人物が次々に現れる中で、三馬はむしろ"普通"であることが特徴のキャラクター。派手さはないが、その分、感情移入しやすい存在となっている。中村は、これまで数々のクセのある役を巧みに演じてきた俳優だが、本作ではむしろ地味な役柄に挑戦。その自然体な演技が、逆に新鮮な印象を与えた。物語が二転三転しながらも、視聴者が物語に引き込まれていったのは、三馬というキャラクターがしっかりと物語の"軸"として機能していたからに他ならない。振り返ってみると、三馬という役は普通でありながらも、実は非常に繊細で演じるのが難しいキャラクターでもある。中村の持つ柔軟さと安定感があってこそ成立した役といえる。

難役にも挑戦!映画でも光る幅広い演技力

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また、映画の世界でも中村の活躍はめざましい。2016年公開の『星ガ丘ワンダーランド』では主演を務め、幻想的な世界観の中で繊細な心の機微を丁寧に演じた。2020年の『水曜日が消えた』では、一人の人物の中に曜日ごとに異なる人格が宿るという難役に挑戦。7つの人格を巧みに演じ分け、その高い演技力が大きな話題を呼んだ。2021年には、塩田武士の同名小説を映画化した『騙し絵の牙』に出演。舞台は斜陽の出版業界。中村は、主演・大泉洋をはじめ、松岡茉優、佐藤浩市、木村佳乃、佐野史郎といった実力派が集う中で、ひときわ確かな存在感を放っている。混沌(こんとん)とする業界内での駆け引きや裏切りが渦巻く中、中村の演技が作品の厚みをさらに引き立てた。そして、2022年には、バカリズム脚本の群像劇『ウェディング・ハイ』に新郎・石川彰人役で出演。篠原涼子演じる"絶対にNOと言わないウェディングプランナー"中越真帆を中心に、結婚式を舞台としたハプニングが次々と巻き起こる中、流されがちで優柔不断な石川を、どこかつかみどころのない雰囲気で好演した。中村の"柔らかさ"や"自然体の芝居"が生きる役どころで、彼ならではのユーモアと温かみがスクリーンを和ませている。

どんな役にも真摯(しんし)に向き合い、ユーモアを織り交ぜながらも、繊細な心の揺れを巧みに表現する中村倫也。彼の演技には、いつも人間味と温もりがあふれている。これから先、私たちにどんな"顔"を見せてくれるのか。その唯一無二の存在から、ますます目が離せない。

文/渡辺敏樹

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放送日時:2025年7月 4日 08:40~

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