阿部寛、今田美桜ら演じる主人公が体現する池井戸作品のテーマ

阿部寛、今田美桜ら演じる主人公が体現する池井戸作品のテーマ

大ヒットドラマ「半沢直樹」シリーズをはじめ、数多くの作品が映画、ドラマ化され、話題を集める作家・池井戸潤。デビュー作の「果つる底なき」で江戸川乱歩賞、「鉄の骨」で吉川英治文学新人賞、「下町ロケット」で直木賞を受賞するなど、名実ともに国民的作家として多くの人に親しまれている。

池井戸作品の特色といえば、元銀行員という経歴に裏打ちされた細部に宿るリアリティーや、まさに「こういう人っているよね」と感じられるようなキャラクター造形、理不尽としか言いようのない組織の力学の中でのせめぎ合いなどが挙げられる。そんな池井戸作品の主人公といえば、信念を曲げない、決して諦めない。主人公が逆境に陥れば、一緒に苦悩し、そこから大逆転を果たした時は見る者も爽快感に包まれるなど、思わず感情移入してしまう物語性も人気の一つ。まさに働く人たちが憧れる主人公たちといえる。そんな池井戸作品の主人公について振り返る。

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「花咲舞が黙ってない(2024)」
(C)池井戸潤「花咲舞が黙ってない」「不祥事」/NTV

銀行を舞台に信念を持った主人公たちを描く

2024年のドラマ「花咲舞が黙ってない」は、2014年、2015年に杏主演でドラマ化された人気作を、今田美桜主演で再始動したシリーズ第3弾。事件や不祥事を起こした銀行支店に行き、解決に導く本部の支店統括部臨店班に異動された舞の奮闘を描く。原作者の池井戸も「少しおてんばなところもあるけれど、曲がったことは大嫌い。そして相手が誰だろうと理不尽には黙っていない」と評した通り、相手が誰であろうと間違っていると思ったら、「お言葉を返すようですが」という決めゼリフで相手に切り込んでいく姿は非常に痛快だ。またシリーズ中盤からは、池井戸作品の人気キャラクター、半沢直樹(劇団ひとり)が登場。本シリーズでは銀行の合併騒動が物語の中心となるが、そこに半沢がどう絡んでくるのかも見どころだ。

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「シャイロックの子供たち」
(C) 2023 映画「シャイロックの子供たち」製作委員会

池井戸作品といえば「半沢直樹」などをはじめ、TBS系日曜21時の「日曜劇場」枠のイメージが強いが、WOWOWの「連続ドラマW」枠も池井戸小説を原作とした見応えのある力作を次々と発表してきた。メガバンクの支店で起こった現金紛失事件を題材とした「シャイロックの子供たち」は、池井戸自身が「自分の作家人生の原点」と語る群像劇。ドラマ版の主人公・西木雅博を演じるのは井ノ原快彦。出世コースからは外れるも、部下からの信頼は厚いという人物像だが、支店内で起こった現金紛失事件の真犯人を追う中で突如、失踪してしまう。ドラマ版では、井ノ原が西木の持つ優しさ、温かみ、その奥底に秘めた苦悩を見事に演じ分けている。そして、2023年には阿部サダヲ主演で映画化もされており、原作者の池井戸自ら脚本協力で参加。映画版では、ドラマ版とはひと味違う演出、クライマックス、キャラクターが登場するなど、映画版独自の物語展開となっている。また、阿部が演じる西木は、彼らしいコミカルな要素を含むキャラクターとなっているなど、その違いを見比べてみるのも面白い。

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「連続ドラマW 株価暴落」
(C)2014 WOWOW/東阪企画

「連続ドラマW 株価暴落」は、経営再建中の巨大スーパーへの融資をめぐり、銀行員がぶつかり合う様を描き出す。主人公の坂東を演じるのは織田裕二。次々と登場するくせ者を相手に組織の論理に染まらず、自らの信念に忠実に突き進み、正義を貫こうとする熱き孤高のバンカーを真正面から演じている。

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「下町ロケット 特別総集編」
(C)池井戸潤 (C)TBS

逆境に直面した主人公がリーダーシップを発揮

池井戸の代表作はいくつもあるが、その中でも直木賞を獲得した人気小説を実写化した2015年のドラマ「下町ロケット」は外せない。本作の主人公・佃航平は、かつては宇宙科学開発機構の研究員であったが、ロケット打ち上げ失敗の責任を取って辞職。父が遺した町工場の佃製作所を継いでいたが、ロケットに対する夢は捨てきれず、ロケットエンジンに必要なバルブシステムを開発。大企業・帝国重工も巻き込む、特許をめぐる攻防が描かれる。航平を演じるのは阿部寛。ライバル企業の卑劣な策略など次から次へと降りかかる困難にぶつかりながらも、技術者出身という誇りを持ち、町工場の仲間たちとその困難を乗り越えていく信念の男として、視聴者の胸を熱くする。

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「ノーサイド・ゲーム」
(C)池井戸潤 (C)TBS

そして、「ノーサイド・ゲーム」も注目を集めた1本だ。主人公・君嶋隼人を演じたのは大泉洋。トキワ自動車のエリート社員として輝かしいキャリアを積んできた君嶋だったが、上司の意向に逆らったことから府中工場に左遷。弱小ラグビーチームのゼネラルマネージャーを兼務するよう命じられる。ラグビーについては何の知識も経験もない君嶋だが、ラグビー部再建のために孤軍奮闘する姿に、周囲の人たちも少しずつ心動かされていく。そんな熱き君嶋を大泉が好演している。

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「七つの会議」
(C)2019 映画『七つの会議』製作委員会

「半沢直樹」「下町ロケット」「ノーサイド・ゲーム」など、数多くの池井戸作品を手がけた演出家・福澤克雄がメガホンをとった映画が『七つの会議』だ。舞台は、大手ゼノックスの子会社である中堅メーカー・東京建電。主人公の万年係長・八角民夫を演じるのは野村萬斎。彼にとっては同作が初のサラリーマン役となる。萬斎が演じるのは、ボサボサの髪&よれよれのスーツ姿でノルマも最低限しか果たさず、会議中にも堂々と居眠りをするような怠惰な仕事ぶりでやり過ごしてきた、ぐうたら社員。そんな問題児である八角を、ひょうひょうとしたユーモラスさとともに、奥底にある魅力を感じさせるのは、狂言師である野村ならではといえる。また、共演の及川光博、香川照之、片岡愛之助、北大路欣也といった池井戸作品で知られる俳優陣の演技にも注目だ。

文/壬生智裕

放送日時:2024年11月 9日 12:00~

チャンネル:WOWOWプラス

放送日時:2024年11月 9日 16:15~

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放送日時:2024年11月23日 12:00~

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