夫ヒョンビンと「青龍映画賞」同時受賞したソン・イェジンが「サメ ~愛の黙示録~」で見せた役者像

夫ヒョンビンと「青龍映画賞」同時受賞したソン・イェジンが「サメ ~愛の黙示録~」で見せた役者像

韓国のみならず、日本でも「愛の不時着」以降さらなる熱狂を呼んでいる女優ソン・イェジン。2026年3月には映画「しあわせな選択」の日本公開が控え、結婚・出産を経ての復帰作となる本作への期待は日に日に高まっている。さらに公私ともに注目を集める彼女は、「第46回青龍映画賞」において、夫のヒョンビンと同一回で主演賞を受賞するという史上初の快挙を達成。一人の女性として、表現者として充実した歩みを重ねる彼女だが、その演技の説得力を語る上で欠かせない一作が、ドラマ「サメ ~愛の黙示録~」である。

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■激情を包み込む「静」の表現力

キム・ナムギルとソン・イェジンが主演を務める、愛と復讐の切ないサスペンス・ラブストーリー「サメ ~愛の黙示録~」。ソン・イェジンは、カヤホテルグループの令嬢で、検事のチョ・ヘウ役を演じている。物語は、ヘウが自身の祖父に仕える運転手の息子ハン・イス(キム・ナムギル)と出会い、初恋に落ちることから始まる。しかし、ヘウの父が起こした死亡事故を巡る陰謀によりイスの父が殺され、イス自身も姿を消してしまう。12年後、検事となったヘウの前に現れたのは、名前を変え、復讐の化身となったイスであった。

本作でのソン・イェジンの演技の真髄は、激しい感情をあからさまに爆発させるのではなく、"静"の動きの中に滲み出る内面の揺らぎにある。特に印象的なのは、死んだはずのイスが別人を装って現れたことに気づき始める一連のシークエンスだ。男の正体に疑問を抱き、動揺を隠しながらも検事としての鋭い視線を向けるヘウ。ソン・イェジンは、わずかな瞳の瞬きや言葉を呑み込む瞬間の喉の動きだけで、ヘウの心情を表現している。愛する人が生きているかもしれないという希望と、それがもたらす破滅への恐怖。その相反する想いが溢れ出しそうになるのを、凛とした立ち振る舞いで踏みとどまらせる彼女の芝居には、沈黙の中に雄弁な物語を語らせる説得力が宿っている。

■視聴者の胸に刺さる涙のリアリティ

「涙の女王」と称されるソン・イェジンだが、本作における涙の美しさも特筆すべき魅力を放っている。それは単なる悲しみの記号ではない。11話でヘウはイスに向かって「地獄の底からでもあなたを救ってみせる」と涙ながらに言い放つ。突きつけられる現実への衝撃や、愛する人を救いたいという覚悟――それらが一気に噴き出すこの場面で、ソン・イェジンの涙は見る者の胸に深く迫る。

また、16話で話題となった、イスがヘウをバックハグするシーンも忘れがたい。抱き寄せられた瞬間、ヘウはただ静かに涙を流す。当惑しつつも、言葉にできない想いや選び取ることのできない未来への痛みが滲んでいる。ソン・イェジンは、身を委ねる姿勢とわずかな呼吸の揺れだけでヘウの複雑な胸中を雄弁に語ってみせている。

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■揺るがぬ意志を宿すヒロイン像

映画「私の頭の中の消しゴム」で見せたはかなげな美しさから、「愛の不時着」での自立した女性像まで、ソン・イェジンは常に時代を魅了するヒロインを体現してきた。その変遷の中で本作が際立つのは、ヘウというキャラクターが単なる"悲劇のヒロイン"にとどまらず、自らの意志で真実の扉をこじ開けていく点にある。運命に翻弄されながらも、最後まで自らで判断し、信念を貫く姿は、ソン・イェジン自身の芯の強い役者像と重なる。

「第46回青龍映画賞」での栄誉は、単なる人気の結果ではなく、彼女が四半世紀にわたって韓国映像界の質を押し上げてきたことへの評価に他ならない。「サメ ~愛の黙示録~」を見返すことは、彼女が国境を越えて共感を集める至高の女優へと成熟していく過程を辿ることと同義だ。その唯一無二の輝きは、年月を重ねるごとに深みを増し、これからも我々の心に寄り添い続けるに違いない。

文/川倉由起子

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