超特急・カイが選ぶ2025年マイベスト韓国ドラマ「悪縁(アギョン)」は、伏線回収が最高!

超特急・カイが選ぶ2025年マイベスト韓国ドラマ「悪縁(アギョン)」は、伏線回収が最高!

僕の一番好きな映画は、クリスチャン・ベール主演の『プレステージ』というアメリカ映画です。綿密に伏線が張り巡らされ、それが劇中でしっかり答え合わせされていってすっきりする......みたいな作品が、すごく好きなんです。今回、2025年マイベスト韓国ドラマに選んだ「悪縁(アギョン)」も、まさにそういった作品。こういうサスペンスが好きな人なら「こことここがつながっていったら面白いよね」と思うようなところを押さえつつ、それを越えた展開も用意されている。見ていてめちゃくちゃ楽しかったですね。

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僕は、一気見したいタイプなんです。最近は、韓国放送にあわせて毎週2話ずつ配信されるドラマもあるなかで、このドラマは全6話がまとめて配信されました。しかも1話が、最終回を除いて50分前後なので、「これなら1日で見られるな」と思ったのが視聴のきっかけでした。ドラマとしては短いけれど、それゆえに無駄なところが一切ない。悪縁がつながっていくところだけにフォーカスして物語が進んでいくので、一気にのめり込みました。

「悪縁(アギョン)」は、逃れられない因縁をテーマに6人の男女の運命が絡み合い、予想もできない結末に向かう様を描いたドラマです。ネタバレ厳禁ドラマなので、ちょっと語りにくいんですけど......。因果応報の描かれ方がすごく見応えがあるんですが、ある意味、とても人間くさいドラマでもあると思います。怒りという感情はどの動物にもありますが、何かを恐れたりする感情は、おそらく人間にしかないものですよね。現実では、このドラマのようなことはしてはいけないけれど、いざ自分の命に危機が迫ったときならどうなのか。あり得ないことではないかもしれない。人間の"えぐみ"というものを、まざまざと見せつけられたような気がします。

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本作は、人間だけの悪縁に留まっていないところも面白いところです。物や場所の因縁についても描かれていきますので、ぜひ注目してほしいですね。霊的なものと結び付けているわけではないですが、現実世界でも「ここって何か嫌な雰囲気がする」というような、いわくつきの場所ってあるじゃないですか。この作品を見て、因果応報というものは、いろいろな形で存在しているのかもしれないな、と思いました。

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俳優陣で目を引いたのは、ハン・サンフン役のイ・グァンスさん。サンフンは、ある晩の飲酒運転によって悪縁に巻き込まれていく韓方医院の院長なんですが、目の前のことを解決するためにほかのことは全部おざなりになっているときの芝居とか、とにかくあせりの演技が本当に圧巻でした。彼の自尊心がどんどん壊されていく展開も絶妙で、「制作陣に心理学者が入っているのでは?」と思うぐらいリアルでした。このコラムのために、僕はこの作品をもう一度見返したのですが、2周目ではパク・ヘスさんの演技にも目がいきました。ネタバレになってしまうので詳しくは控えますが、「ああ、このとき、こんな表情をしていたんだ!」と。また違ったことが見えてきますので、2周見るのもおすすめです!

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僕が「悪縁(アギョン)」を見て思ったのは、悪意は、悪意どうしが触れ合うことでより大きな悪意になるということと、膨大な悪意に善意は通用しないということ。善意は足し算だけれど、悪意は掛け算なので、どんどん増大していって、まったく関係のない人たちまで悪縁に巻き込んでしまう。しかも、このドラマは、そういった悪意の掛け算だけでなく、善意の暴走まで描いているのが見事。猛烈な善意は、踏み外すと悪意に変わることがあるんだなと。

ただ、劇中の登場人物は本当に悪いヤツばかりですが、最後まで見ると、彼らは自分自身を"悪"と認識しているわけではなく、それしか生きる術がない、信じるものがないから、そうしただけのようにも思えます。もっとよく考えれば、いろいろな方法があるはずなのに、焦りは人の思考を浅くしてしまうんですよね。

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ちなみに......僕も苦手な方なんですけど、血みどろのシーンもありますので、ダメな方はスキップしていただければと思います。でも、僕は韓国ドラマの血の描写は意外と見られるんです。「浪漫ドクター キム・サブ」の心臓をそのまま見せる手術シーンもそうでしたが、しっかり意味があるものが多いので。「悪縁(アギョン)」の場合も、衝撃的に見せるためにそのシーンを入れたのではなく、この作品の中ではこの描写が必要なんだというこだわりをすごく感じられたので、見ていて納得感がありました。

最初から4話までもずっと物語が動き続けていて目が離せませんが、5~6話はまた一気にブーストがかかります。いわゆる"伏線回収モノ"といえる「悪縁(アギョン)」ですが、中盤からどんどん謎が解き明かされ、伏線をきれいに回収していってくれるのが気持ちいい。年末年始に一気見したい人はもちろん、伏線回収モノは気になるけど難しそうで見られないという人の入門編としてもおすすめのドラマです。

PROFILE
1994年9月27日生まれ。神奈川県出身。超特急2号車、MAIN DANCER、神秘担当。

取材・文/高山和佳

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