ナ・イヌの存在感が光る!大ヒットドラマ「哲仁王后~俺がクイーン!?~」

ナ・イヌの存在感が光る!大ヒットドラマ「哲仁王后~俺がクイーン!?~」

「初恋DOGs」で日本のドラマに初出演し、日本での認知度と人気がますます高まったナ・イヌ。そんな彼のブレークのきっかけとなったのが、韓国で最高視聴率17.4%を記録した大ヒット時代劇「哲仁王后~俺がクイーン!?~」だ。

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2025年はNetflixで配信された「暴君のシェフ」が話題を集めたが、本作も同様にシェフが朝鮮王朝時代にタイムスリップするという設定である。違うのは、タイムスリップするのは大統領官邸の男性シェフで、しかも朝鮮王朝の王妃の中に魂が入ってしまうということ!

傲慢で女好きの現代人の男性シェフが中の人......という王妃キム・ソヨンを演じたのは、「私のヘリへ ~惹かれゆく愛の扉~」での一人二役も記憶に新しい実力派女優のシン・ヘソンだ。ちょっと下品な物言いをしながら、韓服をたくし上げて宮中を走り回り、保守的な朝鮮王朝に新風を巻き起こすヒロインを熱演している。

一方、対する王は、そんな王妃にあたふたさせられる一見愚鈍な王。「愛の不時着」で注目を浴びたキム・ジョンヒョンが、無能を装いながら裏で改革を準備する王・哲宗を演じる。

見た目は美しい王妃なのに、側近の女官に「将来金になるから"江南の土地を買え"と遺言を残せ」などと露骨なアドバイスしたりするヒロイン。奔放な彼女の言動だけでも笑えるのだが、哲宗とのやりとりもまた面白い。夜を共にするのを避けようとして使った「ノータッチ」という言葉が、英語を知らない哲宗によって勘違いされていく展開はコミカルで爆笑必至の名シーンだ。

だが、本作が最後の最後まで魅力的なのは、単なるコメディー時代劇に留まらないからだろう。王権が弱かった時代を背景にしているため、実権を握ろうとする者たちの熾烈な権力闘いも大きな見どころで、そんな中で愛憎を募らせるナ・イヌ演じるキム・ビョンインの動向がドラマに起伏を与えている。

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劇中で登場する安松キム氏は、朝鮮王朝後期に勢威を振るった実在の氏族・安東金氏をモチーフにしている。ビョンインは、幼い頃にその養子になったという設定で、義父のキム・ジャグンの姉は、王室の実権を握る大王王妃である。

ビョンインは、幼い頃から従妹のソヨンを一途に想っていたが、王の妻となる彼女のために気持ちを封印し、良き兄のような立場を保ってきた。だが、哲宗の心が別の女性にあり、ソヨンが幸せではないことを知ると、次第に哲宗を恨むようになる。やがて、現代人シェフの魂が入ったソヨンと哲宗が近づいていく様を見て、純粋な恋心が次第に執着心に変わっていく。

癒しの大型犬系男子といわれ(身長188.6cm!)、2024年の大ヒット作「私の夫と結婚して」でも、ひたむきに一人の女性を愛する主人公を演じたナ・イヌ。本作でも、物語序盤は、男勝りな姿に変貌したソヨンに戸惑いながらも、何かあればすぐに駆けつける献身ぶりが目を引きつけ、切ない眼差しにくぎ付けになる。

今回のビョンインというキャラクターは、ただの見守り男子ではなく、複雑な心情をもつ悪役的要素が入っているのも大きな魅力である。大切なものを守るために強くなろうと暴走するようになるビョンインを熱演するナ・イヌの存在感は、物語が進むにつれてぐんぐん増していく。

なかでも見せ場は、剣術シーン。高身長から繰り出す史劇アクションは、迫力満点だ。特に、ソヨンをかばいながら立ち回るシーンは見逃せない。その鬼気迫る姿には思わず胸を打たれ、最後には涙してしまうはず。

ナ・イヌは本作でブレークし、その後の「王女ピョンガン 月が浮かぶ川」の主人公の代役抜擢にもつながった。奇抜なストーリーと斬新な演出、シン・ヘソンとキム・ジョンヒョンの抜群の掛け合いも見どころだが、ナ・イヌの活躍も本作の面白さの源泉のひとつである。すでに視聴済みの人も、ナ・イヌ演じるビョンイン目線で「哲仁王后~俺がクイーン!?~」を改めて見直してみては?

文/高山和佳

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