シュー・カイが告白、「楽游原(らくゆうげん)」への熱い思い「7日連続、泣く演技ばかりで心が折れました...」
韓国・アジアドラマ インタビュー
2025.05.15
「招揺」「陳情令」の製作スタッフが再集結した大型ロマンス・アクション史劇「楽游原(らくゆうげん)」。皇帝を廃して中央権力を握った反乱軍を鎮圧するべく、国境を守る皇帝の孫・李嶷(りぎょく/シュー・カイ)と、正体を隠した将軍の娘・崔琳(さいりん/ジン・ティエン)が、それぞれの軍勢を指揮し、相対する中で惹かれ合い、時に敵対し、時に協力しながら乱世を駆け抜けていく...。今回、本作で李嶷を演じたシュー・カイに、役への思いや撮影の舞台裏を聞いた。
――"楽游原"の概念について教えてください。(※楽游原=唐時代の長安(現在の西安市)にあった高原保養地)
「楽游原は一種の港のようなもので、誰の心にもそれぞれ楽游原があるんです。例えば、僕の楽游原は撮影を終わって家に帰り、家族と過ごすこと。家がまさに僕にとっての楽游原なんです。人それぞれに楽游原があり、旅先にそれを感じる人もいるかもしれません」
――李嶷はどんな性格だと思いますか?
「李嶷は現状のままでいることが割と好きで、あまり野心を必要としない人物です。酒があり、友達さえいれば一生を送れると思っている。狩りをして辺境を守り、羚羊(レイヨウ)を焼いて仲間と酒を飲んで、束縛なく自由に、恐怖のない世界に生きたいと思っています」
――ご自分とは違いますか?それとも似ていますか?
「自由や食べること、友達と過ごす時間が好きだったり、誰にでも李嶷に似た部分があると思います」
――彼は望んで皇孫になったわけではない、という人もいますが、そう思いますか?
「はい、完全に強いられた立場です。彼は普通の仲間たちと集まるのが好きで、権力争いは嫌いです。競争や闘いを好まず、目先の利益を追うような行動は望みません」
――崔琳はどんな性格の女性でしょうか? 武人の家に生まれた彼女ですが、名家の令嬢とはどんな違いがありますか?
「武芸に長けていて、知略にも優れています。深い思考ができて、状況に応じた策を立てることができます」
――ドラマを通して、崔琳に最も伝えたいことは何ですか?
「そうですね...。少しずつでも現実を受け入れてほしい、という気持ちでしょうか」
――李嶷はなぜ崔琳が好きなのでしょう?
「互いに評価し合っているからだと思います。そして、助け合ううちに徐々にお互いが支えとなり、愛へと変わっていったんでしょうね」
――崔琳と一緒にいて、尻に敷かれている感じはしますか?
「そうでもないですね。お互いに勝ったり負けたりといった関係です」
――そうした互角の力関係にある者同士の恋愛の、一番魅力的な点とは?
「長く続くことです。お互いに光る部分があり、惹かれ合う。頻繁に交流することで、最良の関係を育んでいけます」
――ひと言で、2人の恋愛の発展過程を表すなら?
「知恵や勇気を競い、愛し合い、殺し合い...。そして白髪になるまで共に生きるですね」
――これまでにも多くのアクションドラマに出演されていますが、「楽游原」のアクションで今までと違う点は?
「『楽游原』のアクションは、伝統的な格闘シーンの動きとは違い、互いに助け合う感じです。交互に拳を交わす鴛鴦(えんおう)拳法のような、代わる代わる攻撃をする感じです。カットされたシーンもありますが、ダイレクトに顔を殴って避けるのではなく、つかまれた手首を返して振りほどくような感じで面白かったです」
――シュー・カイさんが敵に勝つシーンが好きな視聴者は多いですが、それについては?
「僕も、敵に勝つシーンの撮影は好きです。血が騒ぎますし、自分でもカッコイイなと思います」
――李嶷と崔琳はケンカを通じて愛を育みますが、撮影の時に印象的だったことを教えてください。
「とても疲れました。知恵や勇気を比べるようなセリフもあれば、いきなり戦い始めることも。戦いの途中で道理を説き始めたかと思えば、お互いの兵たちがケンカを始めるなんてこともよくありました」
――恋愛以外に、男同士の友情も多く描かれています。李嶷と鎮西軍の仲間たちへの思いを聞かせてください。
「自分の命も顧みずに戦う、生死を超えた友情です。出陣するたびに死を覚悟しながらも、酒を片手に楽しく語らう仲です」
――李嶷と崔琳は「一人の命」と「天下」、どちらを救うべきかの問題で衝突しましたが、李嶷が貫いた信念は何ですか?
「今でも覚えている李嶷のセリフは『救える者は救うし、天下を救えるなら救う。目の前に助けを必要としている人がいる、または助けられる人がいれば救う』です。けれど、崔琳の考えはおそらく違って、天下を救えばより多くを救えると思っている。一方、李嶷は目の前の助けを求める人を救おうとします。どちらも間違いではなく、おそらく将来を見るのか、まずは目の前を見るかの違いです」
――スティーブン・チェン監督とお仕事をされるのは2回目でしたが、前回と違う点はありましたか?
「やはり、なじみがありましたね。チェン監督は真面目でプロ意識が高い。撮影現場全体の環境や配置、空気を掌握していましたし、テンポも速かったです。アイデアをたくさん持っているので、僕たちはそれを理解して意図を確かめ合い、とても親密な関係でした」
――原作・脚本の匪我思存(フェイ・ウォスツゥン)さんとお仕事をした感想は?
「(指を立てて)すごいですね、とても残酷です(笑)。いわゆるママハハのような雰囲気が感じられました。7日連続で撮影したことがあって全部違うシーンだったのですが、どれも泣く演技ばかりで心が折れました...。つらかったですね」
――李嶷の一番魅力を感じた点は?
「李嶷はとても善良です。野心がないわけではないですが、今が幸せなので望んでないだけ。最初は、辺境で仲間と狩りをして、しゃべって笑い合って、戦も楽しんでいた。そんな生活が徐々に変化し、周囲の状況が変わっていく中で、少しずつ前へ押し出され、最後には皇太子になった。僕が好きだったのは攻略編です。毎日、どの城や街を落とすかなど、仲間たちと話す。減らず口をたたきながらも覇気があり、並州を落とすとなれば馬に乗り、兵を引き連れて戦う。撮影をしていて、ここを落としたのだなと感じたのは、城を落とすたびに広間で酒を片手に地図を見て、仲間たちと次の作戦を練っている時。鎧(よろい)を着け、兵を引き連れていくのが、演じていて面白かったです」
――崔琳役のジン・ティエンさんと共演した感想は?
「ジン・ティエンさんも、とても真面目でプロ意識が高いです。よくコミュニケーションを取り、殴り合うシーンでは演技などについて意見を交換しました。崔家軍は鎮西軍と違う。撮影していて面白かったのですが、鎮西軍は遊撃隊のようなもので、崔家軍は官軍です。僕たちはボロボロの服で(笑)。見ました?」
――軍としてカテゴリーが違う、という意味ですか?
「そうですね。正規軍と非正規軍という違いです」
――民間兵のようなもの、ということでしょうか?
「そんなところですね。僕らはボロボロの服を着ているけど、対照的に崔家軍は...。最初に見た時、僕は『監督、これはダメですよ。並んだら僕らは大声で話せない。僕らが大声で話したら野蛮に見えるけど、彼らが大声で話したら気概があるように見えてしまう』って言いました。崔家軍の衣装は黄金の飾りも付いて、全身鎧でカッコイイんです。それに比べて、鎮西軍の衣装の装甲は鉄片だけ。しかも半分で、鎖帷子(くさりかたびら)なので鉄片といってもほんの少しです。撮影が始まる前、鮑(ほう)役のジュー・ホンジアさんが気分が悪いと言うので、どうしたのか聞くと『これまでは気にならなかったけど、今は本当に圧迫されてる気がする。あっちは豪華な衣装だけど、俺たちは野蛮で、腹ペコにしか見えない。頭巾までかぶってね』と。そんな時、ティエンさんはいい人で『バカなことはもう言わないで。私たちがちゃんと伝えるから。無理に話さなくていいから』と言ってくれたんです。僕たちは彼女に感謝しました。毎日、監督も交えて話すなど、みんな本当に真面目です」
――プライベートで、ジン・ティエンさんと何か面白いことはありましたか?
「食事の時も、この後の撮影をどうするかなどについて、監督やみんなを交えて話しましたね」
――ジン・ティエンさんといえば、誇り高く、クールなイメージですが、撮影を終えて、ご本人をどんな言葉で表現するのがふさわしいと思いますか?
「賢いですね。それから活発でいたずら好き。食べるのが好きで、おやつをよく食べていました」
――ジン・ティエンさんとふざけて、小学生のようなケンカをしていたそうですが、ケンカの原因は?
「冗談でケンカしただけかな? 忘れました(笑)。例えば馬に乗った時、僕がふざけて『これ以上言ったら馬の尻をたたくからな。そしたら走り出すぞ』と言ったんです。ちなみに彼女は白馬、僕は黒馬でした。すると彼女が『やってみなさいよ』と言うので、僕がたたくふりをして手を伸ばすと、やらないよう頼んできたり...。よくそんな感じで遊んでいました」
――李嶷の性格はあまり政治には向いていないように思いますが、運命が彼を選んだ時、責任を負えるでしょうか?
「李嶷は、どんな時も責任を負える人物です。とても責任感が強い人間ですから。ただ、帝位には就きたくない。人に背中を押されて高位に就くのは、本意ではありません」
――そんな彼の姿から、私たちは何を学ぶことができると思いますか?
「彼は強いられただけですが善良で、救える者は救うという信念を持っている。天下はあまりにも大きくて遠いので、一歩ずつ目の前のことをするだけ。僕たちが彼から学べる一番大きなことは、『善良であれ、初心を忘れるな』ということです」

インタビュー
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