ソ・ジソブ×イム・スジョン共演、20年の時を経ても色褪せない名作ラブストーリー「ごめん、愛してる」
2025.04.30
「ごめん、愛してる」は、韓国のレジェンドドラマとして今も愛されている一作だ。20年以上前の作品だが、パク・ヒョシンが切ない声で歌う「雪の華」(中島美嘉の楽曲の韓国語カバー)を聞くと、往年のファンは名場面を思い出し、今でも心がうずくはず。2017年には日本でも長瀬智也主演でリメークされたので、ドラマの内容を知っている人が多いかもしれない。
主人公を演じるのは、昨今も「私の恋したテリウス〜A Love Mission〜」などドラマの主演俳優として活躍するソ・ジソブ。ヒロインは、この作品のあと映画界に軸足を置きつつ、最近は「恋愛ワードを入力してください~Search WWW~」などでドラマにも復帰しているイム・スジョン。"ミサ廃人"(韓国語タイトルの「ミアナダ、サランハンダ」の頭文字をとった略語で「ごめん、愛してる」の熱狂的なファンのこと)という流行語を生み出すほどの大ブームを巻き起こした本作は、二人にとっても大きな転機となった。
左からソ・ジソブ、イム・スジョン、チョン・ギョンホ
(C)KBS
物語は、オーストラリアのメルボルンから始まる。幼なじみの人気歌手、ユン(チョン・ギョンホ)のスタイリストとしてメルボルンを訪れたウンチェ(イム・スジョン)は、生まれてすぐにオーストラリアに養子に出され、野良犬のように生きるムヒョク(ソ・ジソブ)に出会う。その後、銃撃戦に巻き込まれケガをしたムヒョクは余命宣告を受け、頭の中の銃弾を取り出すために生まれ故郷の韓国に戻り、二人は再会する。やがてムヒョクは、自分を捨てた母に復讐心を抱くようになるが、母に近づくためにウンチェともかかわるようになる。
「賢い医師生活」や「イルタ・スキャンダル 〜恋は特訓コースで〜」で人気のチョン・ギョンホが、初々しい姿で人気歌手のユン役を演じていることや、今流行りのY2Kファッション(Y2Kとは「Year 2000」の略語で、2000年代のテイストを取り入れたファッションのこと)を見るのも楽しい本作だが、何といっても大きな見どころは主演二人の名演技だろう。
左からソ・ジソブ、チェ・ヨジン
(C)KBS
特にソ・ジソブは、あまりにもハマり役だ。久々に見てもまったく色褪せていない。一見、荒々しいが、愛に飢え、心の奥に熱情と温情を併せ持つムヒョク。憂いを帯びた眼差しと、時折見せる寂しげな笑顔が美しすぎて、目がくぎ付けになる。今に比べると演技は粗削りなものの、だからこそ若者特有の危うさがよりリアルに迫ってくる。
「ごめん、愛してる」は、ラブストーリーだけに焦点が当てられがちだが、ソ・ジソブ演じる主人公ムヒョクの出生も大きなポイントになっている。本作は、韓国の社会問題でもあった海外養子の悲劇を正面から取り上げている。韓国では、朝鮮戦争後に戦争孤児が増えたことや、社会的偏見が強いために未婚の母が子を手放すことが多かったことが、海外養子の増加につながった。
劇中のムヒョクも、若手女優だった母親が彼を育てられずに手放し、オーストラリアの海外養子となった設定だ。しかも結局、養子先のファミリーとうまくいかずに家出をし、ストリートチルドレンとして育つ。さらに余命宣告を受けて帰国すると、自分を捨てた母親が自分以外の息子を溺愛していた。そんな孤独な境遇の主人公の切実な恋が、このドラマでは描かれていくのだ。
左からイム・スジョン、チョン・ギョンホ
(C)KBS
2000年代初頭の作品ということもあり、今の韓国ドラマと比較すると粗さはあるものの、イム・スジョン演じるウンチェの「サランへ」連呼の名場面からラストに至るまでの展開は圧倒的である。昨今の韓国ドラマは悲劇で終わることが少ない。サッドエンドであっても、前向きな要素が付け加えられていることが多い。だが、本作の最後は悲劇に悲劇を重ねてくる。今ではなかなか作られなくなった号泣のラストが用意されているのだ。
お薦めは、最終回を見た後に再度、第1話の最初のシーンを観ること。メルボルンで無邪気にインタビューに答えるムヒョクの姿が胸に迫り、より深くこのドラマの悲劇に浸れるだろう。昨今の"沼落ち"よりもさらに濃密な"ミサ廃人"の世界を、ぜひ一度体験していただきたい。
文/高山和佳