名優キム・ナムギルの本領発揮!?アクションコメディーの傑作「熱血司祭」【古家正亨連載】
韓国・アジアドラマ 連載コラム
2025.05.01

古家正亨 (ラジオDJ/イベントMC)
ラジオDJ、イベントMC。 K-POPなどの「韓流」カルチャーを20年以上にわたり日本に紹介してきた古家正亨が、毎月オススメの韓流コンテンツを紹介。

古家正亨 (ラジオDJ/イベントMC)
ラジオDJ、イベントMC。 K-POPなどの「韓流」カルチャーを20年以上にわたり日本に紹介してきた古家正亨が、毎月オススメの韓流コンテンツを紹介。
先日、久々に俳優キム・ナムギルさんとファンミーティングで再会しました。これまで何度もナムギルさんのファンミーティングで司会をさせていただきましたが、最近はタイミングが合わず、しばらくお会いできていなかったんですが、今回、ようやく再会が実現したんです。で......そのファンミーティングですが、なんと、4時間15分でした!これまで僕は四半世紀にわたって韓流やK-POP関連のお仕事をさせてもらいましたが、1回のイベントで4時間を超えたのは初めてです。しかもコンサートではなく、ファンミーティング。もちろん、歌の上手いナムギルさんなので、それなりに歌唱もありましたが、それでも4時間超えるというのは、異例中の異例。ところが......そんなに長くても......面白かったんです。そもそもナムギルさんは、とても面白い人で、おしゃべりも上手なんですね。ただ、名作は数あれど、これまで出演された作品で、その"才能"(!?)がいかんなく発揮されたものがあったかというと......いや、それがあるんです。まさに、その作品が、今回ご紹介する「熱血司祭」です。
(C)SBS
キム・ナムギルさんが演じるのは、司祭でありながら、たびたび警察沙汰を起こす、感情のコントロールが出来ないヘイルという主人公。そんなヘイルにとって父親のような存在である神父さんがいたのですが、ある日、その神父さんが遺体として発見されることに。これは殺人事件だと主張するヘイルに対して、検事のキョンソン(イ・ハニ)は自殺として処理しようとします。実はキョンソンもまた、この神父さんを慕っていたのですが、出世欲が強かったため、疑いながらもヘイルと対立してしまうのです。
話のベースにはそんな背景があるのですが、当然、この2人はこのあと歩み寄っていくことになるわけです。さらに、この神父の事件を担当することになった刑事デヨン(キム・ソンギュン)の存在とその過去、意外と重めな感じの幕開けとなるこのドラマなんですが、これまでの韓国ドラマであれば、きっとノワール・アクションになりそうな題材ですが、これがびっくりするほどコミカルで、かつしっかりアクションも見せてくれる、王道の犯罪捜査モノになっているところが素晴らしい。
(C)SBS
しかも主要キャラクターであるヘイル、キョンソン、デヨンだけでなく、悪役に至るまでキャラクターの個性が突き抜けていて、シリアスなんだけれど、クスッと笑わせてくれたり、かと思えば、華麗なアクションで悪に対抗するという、その絶妙に緩急の効いた脚本と演出が、これまでにありそうでなかった、唯一無二感を出しているんですよね。
そして、先の話に戻りますが、キム・ナムギルさん。その寡黙な感じと、何かを背負いながら生きている背徳感のある感じが魅力の俳優さんですが、実際の本人は、ブラックジョークが大好きで、やんちゃで、いたずらっ子な面を持っています。それが、ファンミーティングなど素が垣間見られる場面で魅力として爆発するんですが、きっとこれまで溜まっていたであろう彼のコミカルな面を、ヘイルというキャラクターを介して、ようやく表現できているように個人的には感じたんです。なので、僕は(個人的に)ヘイルがナムギルさんらしい、これまでで一番の当たり役だったのではないかと思います。
(C)SBS
そして本作は、単純なアクションでもコメディーでもなく、韓国ドラマらしく、しっかりと世相を反映させています。放送当時(2019年)、社会を揺るがした事件や事故をさりげなくモチーフにしたストーリーを展開させるなど、ただ楽しむだけでなく、視聴者に問いかけているところが魅力でもあります。あとは韓国ドラマや映画好きにはたまらない名作のパロディーも散りばめられているので、それを探すのも本作の面白さの一つかもしれません。
キョンソン演じたイ・ハニ
(C)SBS
最高視聴率は22%を記録し、「2019 SBS演技大賞」ではキム・ナムギルさんが大賞、キョンソンを演じたイ・ハニさんが最優秀演技賞、デヨンを演じたキム・ソンギュンさんが優秀演技賞を受賞するなど8冠の快挙を達成したのも納得で、「2019 ソウルドラマアワード」では韓流ドラマ賞部門で最優秀作品賞を受賞するなど、人気だけでなく、高い評価を得た作品でもあります。2024年には5年の月日を経て、続編にあたる「熱血司祭2」も放送され、おなじみのキャストたちが相変わらずのケミ(化学反応)を見せて話題を集めました(こちらはよりコメディー要素が強いかも)。
老若男女問わず楽しめるドラマ「熱血司祭」。タイトルでは"アクションコメディー"と表しましたが、よくよく考えてみれば"熱血司祭"というジャンルのドラマと言えるかもしれません。