河合優実の"ブレイク前夜"の演技に迫る!「PLAN 75」など存在感が光る出演作品に注目
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2025.03.28
第48回日本アカデミー賞で最優秀主演女優賞に輝き、2025年度前期の連続テレビ小説「あんぱん」への出演も話題を呼んでいる女優・河合優実。2019年のデビュー後、2021年公開の映画『由宇子の天秤』や『サマーフィルムにのって』でメインキャストを務め、その卓越した演技力が高く評価されたことで、国内の映画賞で新人賞を次々と受賞。映画ファンの間では、早くから期待の新星として注目を集めていた。
そんな彼女の存在をお茶の間レベルにまで広めたのが、「ふてほど」の愛称で2024年のユーキャン新語・流行語大賞にも選ばれたドラマ「不適切にもほどがある!」だ。父親と激しい口論を繰り広げながらも、どこか純粋さを残す不良少女・純子役を魅力たっぷりに演じ、視聴者の心をつかんだ。この役柄をきっかけに、業界内では今最も起用したい女優として熱い視線が注がれている。
話題作への出演や受賞が続く今注目の若手女優!
その後の彼女の快進撃はとどまることを知らない。入江悠監督作『あんのこと』で日本アカデミー賞・最優秀主演女優賞を獲得し、声優を務めたアニメ映画『ルックバック』は異例のロングランヒットを記録。さらに、主演を務めた『ナミビアの砂漠』がカンヌ国際映画祭・監督週間で国際映画批評家連盟賞に輝くなど、受賞歴は枚挙にいとまがない。
2025年に入っても注目作がめじろ押しだ。3月公開の映画『悪い夏』では、北村匠海演じる市役所のケースワーカー・佐々木を破滅へと導くシングルマザー・愛美を怪演し、見る者を圧倒。一方、4月公開予定の映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』では、お団子頭が印象的な凛(りん)としたヒロイン・桜田花を繊細に演じ、その幅広い役柄への対応力を改めて印象付けている。
前述のとおり、河合優実の名が広く知られるきっかけとなったのは、2024年放送のドラマ「不適切にもほどがある!」だが、その活躍を語るうえで欠かせないのが"ブレイク前夜"ともいえる2022年だ。この年、彼女は多くの映画作品に出演し、一つひとつの作品で確かな存在感を放っている。その中から特に印象的な作品を紹介する。
"ブレイク前夜"の存在感が光る出演作品に注目!
早川千絵監督の長編デビュー作『PLAN 75』は、2022年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品されるという快挙を成し遂げ、注目を集めた作品だ。物語の舞台は、少子高齢化が進んだ近未来の日本。75歳以上の高齢者が自ら申請することで安らかな最期を選べる――そんな架空の制度「PLAN75」を通して、観る者に重く切実な問いを突き付ける。河合優実が演じるのは、その「PLAN75」申請者専用コールセンターで働く女性・瑶子。非情とも言える制度を、仕事として淡々と受け入れていた彼女だが、ある日当事者であるミチ(倍賞千恵子)と関わることで、次第に心の奥に揺らぎと葛藤が芽生えていく。河合はこの難しい役どころを、繊細かつ抑制の効いた演技で見事に体現している。
続いて紹介する『百花』は、『怪物』『すずめの戸締まり』など数々の話題作を手掛けてきた気鋭のプロデューサー・川村元気が、自身の小説を映画化し、自ら監督も務めた作品だ。認知症と診断され、少しずつ記憶を失っていく母(原田美枝子)と向き合うことで、自身の封印してきた記憶とも向き合うことになる息子・泉(菅田将暉)の姿を描くヒューマンドラマだ。河合優実が演じるのは、泉が勤務するレコード会社の後輩・田名部美咲。ヴァーチャルアーティスト「KOE」開発チームのディレクターであり、職場では上司・大澤(北村有起哉)との関係がうわさされる存在でもある。登場シーンは限られているものの、彼女のキャラクターが物語に確かなリアリティーを与えている。
そして、『ちはやふる』シリーズの小泉徳宏監督が、砥上裕將の青春芸術小説を実写映画化した『線は、僕を描く』。深い喪失の中にあった大学生・青山霜介(横浜流星)が、水墨画との出会いを通じて成長していく姿を描いた物語。河合優実が演じるのは、霜介の同級生・川岸美嘉。霜介の過去を知る存在として、同級生・古前巧(細田佳央太)と共に、彼を明るく支え続ける役どころだ。時に古前とのボケとツッコミのような軽妙なやりとりを見せつつ、物語に温かさと活気をもたらしている。
また、日本アカデミー賞で最優秀作品賞に輝いた『ある男』は、芥川賞作家・平野啓一郎のベストセラー小説を、『愚行録』の石川慶監督が映像化し、妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝ら豪華キャストが顔をそろえたヒューマンミステリーだ。「亡くなった夫が、実は別人だったのではないか」という女性からの奇妙な依頼を受けた弁護士が、少しずつ"ある男"の過去に迫っていく物語が展開される。河合優実が演じるのは、物語の鍵を握る"ある男"(窪田正孝)の過去を知る女性・茜。多くを語らないながらも、過去の影を背負った彼女の存在が、主人公の調査をさらに深いものにしていく。
心の機微を描いたオムニバスドラマで主演も!
最後に紹介する作品は、オムニバス形式のドラマ「ワンナイト・モーニング」。奥山ケニチの同名コミックを原作とし、男女が一夜を共にした後、ささやかな"朝ごはん"の時間を通して心の機微を描き出す。河合が主演を務めたのは第4話「牛丼」。彼女が演じるのは、自身の過去に囚われ、ずっと後悔を抱え続けてきた女性・たまこ。高校時代の同級生・牛尾と偶然再会し、止まっていた時間が少しずつ動き出していく様子が描かれる。引っ込み思案で、自分の気持ちをうまく伝えられないたまこの不器用さ。それでも「変わりたい」と切実に願う彼女の姿は、見る者の胸に静かに染み渡る。
文/壬生智裕