西田敏行の出演作5選!「ステキな金縛り」など、記憶に残る名演を振り返る
2024.12.04
2024年10月17日、俳優の西田敏行がこの世を去った。西田といえば、シリアスからコメディーまで、どんな役を演じても抜群の存在感を発揮する名優だ。ファンに愛されるばかりでなく、スタッフや同業者にも彼を尊敬する人は多い。まさに国民の宝とも言えるほどの偉大な俳優であった。代表作は数多いが、1988年から22年にわたるロングランとなった映画「釣りバカ日誌」シリーズの主人公ハマちゃんこと、浜崎伝助役は彼のライフワークとも言える。また、ドラマ「釣りバカ日誌 新米社員 浜崎伝助」では、鈴木一之助(スーさん)役を務めた。また、敵役ながら「ドクターX」シリーズでの蛭間重勝役は、個性的で憎めない悪役の典型として人気に。そんな西田の演技を堪能できる5作品を紹介する。
■ステキな金縛り
2011年公開のコメディー映画。三谷幸喜監督がメガホンを取り、法廷ドラマにファンタジーの要素を盛り込んだ画期的なスタイルの作品。三流弁護士・宝生エミ(深津絵里)が担当する殺人事件で、被告人のアリバイを唯一証明できる落ち武者の幽霊・更科六兵衛を西田が演じている。六兵衛が自分の姿が見えない人の前で大はしゃぎするシーンでは、西田のコメディーセンスが遺憾なく発揮されている。共演には竹内結子、浅野忠信、篠原涼子、佐藤浩市、中井貴一ら豪華キャストが集結。「大の西田敏行ファン」を自認する三谷監督が自由にはじける役としてキャスティングし、あえてアドリブを全開。公開時の反応に対し、「悔しいような、うれしいような...」と三谷監督が西田のアドリブ力に賛辞を贈っている。
■西遊記<4Kデジタルリマスター版>
日本テレビ開局25周年記念番組として企画され、1978年に放送開始。西田は猪八戒役を演じた。明るく人情味あふれる孫悟空(堺正章)、心美しい三蔵法師(夏目雅子)、ひょうひょうとした沙悟浄(岸部シロー)、大食いで愛嬌(あいきょう)のある猪八戒など、演者の個性を生かしたキャラクター設定と軽妙な掛け合いが楽しい作品だ。平均視聴率は約19.5%、最高視聴率(最終回)は27.4%を記録。英語版はイギリスなど海外でも大評判となった。
■雲を翔びこせ
TBS系で1978年に放送された大型ドラマ。近代日本の経済界に大きな足跡を残した澁澤榮一の青年期と、幕末における多彩な登場人物の群像劇が描かれる。西田は澁澤榮一役で主演。友人でもある武田鉄矢が演じる、親戚の澁澤喜作と栄一が衝突するシーンは見どころだ。明治政府の民部・大蔵卿、大隈重信役の石坂浩二をはじめ、柴俊夫、川崎麻世(※「崎」は正しくは「立さき」)、関口宏、大滝秀治、平田満、三浦洋一らが共演。また、攘夷の志士・尾高長七郎役でミュージシャンのChar、明治新政府の右大臣・三条実美役でフォークシンガーの小室等も出演している。
■白い巨塔
山崎豊子原作の同名小説4度目のドラマ化で、2003年にフジテレビ系で放送された。主演は財前五郎役の唐沢寿明。彼の終生のライバルである里見脩二を江口洋介が演じている。西田は、財前の妻・杏子(若村麻由美)の父・又一を熱演。大阪で病院を営む資産家で、大阪市医師会副会長の要職にある又一は、お調子者だが義理の息子である財前の教授就任に尽力。金に物を言わせて根回しするため、意地汚いイメージを出そうと西田自身の提案で、付けひげにカツラを着用した逸話がある。ただ、財前をわが子のようにかわいがる姿が憎めず、まさに西田の持ち味が存分に発揮された役柄だ。最終回の視聴率は32.1%を記録した。
■ゲロッパ!
井筒和幸監督による2003年公開の人情コメディー映画。ソウルミュージックの帝王ジェームス・ブラウンの誘拐計画や、生き別れた娘との再会など、収監を目前に控えたヤクザの組長・羽原(西田敏行)をめぐって繰り広げられる騒動を描く。笑えるシーンが満載で、西田のコメディー力に改めて感心させられるが、泣かせるシーンでの芝居も見事。本作ほかで、西田は毎日映画コンクール男優主演賞やブルーリボン賞主演男優賞などの映画賞を受賞した。生き分かれた娘のかおり役で常盤貴子が出演するほか、岸部一徳、寺島しのぶ、ラサール石井、トータス松本ら、多彩なキャストがそろう。その後、政治家に転身した山本太郎も好演し、本作ほかでブルーリボン賞助演男優賞を受賞している。
文/渡辺敏樹