中国トップスター、ワン・イーボーの魅力とは?数々の出演作で吹き替えを務める声優・立花慎之介にインタビュー!「ひと言に重みが出ることを考えて演じました」
ドキュメンタリー TV初インタビュー
2025.03.20
世界中が熱狂したファンタジー時代劇「陳情令」(2019年)を起爆剤に、大躍進を続ける中国トップスターのワン・イーボー。その後もドラマに立て続けに出演し、活躍の場をスクリーンの世界にも広げ、2024年は"イーボー・イヤー"と称されるほどに注目されている。
そんなワン・イーボーのドラマや映画の日本語吹替版に抜てきされたのが、声優のトップランナーである立花慎之介さんだ。数多くのイーボー作品を担当する立花さんが感じている彼の魅力とは、印象とは。声を演じる上で心がけていることなども語ってもらった。
――ワン・イーボーの声を演じる際、どのようなことを心がけていますか?
「ワン・イーボーさんの役柄は、クールでせりふが少ない人物が多い印象です。中国ドラマ『陳情令」でワン・イーボーさんが演じた藍忘機(ラン・ワンジー)がまさにそうで、1話の中でせりふがたったのひと言、ふた言なんていう回もあるんですよ。だから、常にそのひと言に重みが出ることを考えて演じましたね。僕は、『陳情令』の原作であるBL小説『魔道祖師(まどうそし)」のアニメ版で先に同じ役を演じていたので、その時の役作りも意識しました。
一方、ダンサーを演じた映画『熱烈』では、ワン・イーボーさんの地声であるミドル以上の音域を意識して若者らしさを出すなど、彼が演じる役柄と演じ方によって変化を加えています」
――「陳情令」がワン・イーボーの世界的ブレークのきっかけでしたが、ドラマを初めて見た時の印象は?
「まず『よくぞここまでイケメンをそろえたな!』と驚きましたね(笑)。アニメ『魔道祖師』では描かれていなかった部分も丁寧に描かれていてとても分かりやすかったですし、壮大なスケールのセットやド派手なアクションまで中国ドラマのすごいところが詰め込まれている作品だと思いました」
――ファンを魅了するワン・イーボーの魅力は何だと思いますか?
「彼は動いていても、止まっていても"さま"になるんですよね。顔が整っているのはもちろんなんですが、まとっている空気感や佇まいのすべてが整って成立しているという魅力をお持ちだと思います。それらが作品の中で生きてきているのではないかな、と。
役者としての演技だけでなく、ダンスや音楽、バラエティーにも挑戦しているのをご存じでしたか?どんなことにも真剣に取り組んでいる姿を見ていると、こちらも応援したくなるんですよね。そんな部分もワン・イーボーさんの魅力だと思います」
――4月に日本初放送となるワン・イーボーの冒険ドキュメンタリー「ワン・イーボー:探索新境」でも新たな顔を見せてくれそうです。
「映画やドラマでとはまた違う一面が見られそうで楽しみです。僕自身、冒険家ベア・グリルスさんのサバイバル術の番組が大好きなんです。いつか彼と共演してほしいですね(笑)。その時は僕がナレーションします!(笑)」
――中国ドラマや映画を日本語で吹き替えするときに気をつけていることなどありますか?
「中国語の場合、言葉を切る場所に特徴があって、そのまま日本語に置き換えると口の動きと合わなくなるんです。うまくブレスが入るように脚本家さんが変えていますが、変えられない文節の場合は、違和感なくしゃべるというスキルが必要とされます。それに、中国語での会話はスピードがあるので、原音に惑わされると日本語が早くなってしまうんです。聞いている音は早いけれど、しゃべっている音はゆっくりというタイムラグを脳の中で処理しながら吹き替えしています」
――アニメーションの役柄を演じるのと、実写映像を吹き替えるのでは意識するポイントが違ってくるのでしょうか?
「アニメーションの場合、基本的に声のない映像に僕らが声をのせるので、想像しながらオーバーめに演じることが多いですね。映画やドラマの吹き替えは俳優さんが演技をされているので、俳優さんの動き、口の開け方、表情をトレースしてそちらに合わせていく、観察しながら吹き替えています」
――もし、ワン・イーボーに会えたら何をしたいですか?
「一緒にご飯とか行ってみたいですね。私生活がまったく見えない方なので、普通に世間話をしてみたい(笑)。あと、日本のアニメを見ているか聞きたいですね。何かご覧になってたらうれしいし、日本のアニメの話題で盛り上がりたいです」
――最後に、立花さん演じる日本語版吹替でのワン・イーボー作品をご覧になるファンの方々にメッセージをお願いします。
「僕自身、映画やドラマの吹替はまだまだ勉強中。吹替の声優として成長して、ワン・イーボーさんに近づきたいと思っています。原音のワン・イーボーさんの声もすてきですが、ぜひ吹替版の声も聞いていただけるとうれしいです!」
文/水本晶子 撮影/中川容邦
立花慎之介さんが吹き替えを担当した「ボーン・トゥ・フライ」「無名」吹替版を配信中。