アメリカ大統領選挙直前!ドナルド・トランプの波乱万丈の足跡をたどる
2024.10.30
第45代アメリカ合衆国大統領のドナルド・トランプは、不動産王として名をはせてテレビ番組の司会者や映画出演なども果たした著名人。2016年の大統領選挙に共和党から出馬し、おおかたの予想を覆して民主党候補のヒラリー・クリントンを破った。
波乱の私生活とビジネスでの成功と苦難
トランプは1946年にニューヨーク市のクイーンズで、5人兄妹の4番目として生まれた。少年時代はやんちゃで、素行不良のために陸軍学校に転校させられたこともあった。フォーダム大学から不動産を学ぶためにペンシルベニア大学に移り、同大で経済学士号を取得。卒業後に父の会社に入社し、事業を引き継いで1971年に「トランプ・オーガナイゼーション」の経営者となって辣腕(らつわん)を振るう。高層ビルやホテル、カジノなどを続々と建設し、自らの名を冠したライセンス事業なども行った。航空業界に進出して「トランプ・シャトル」を設立、最高級ホテルの「プラザ・ホテル」の買収などで話題を振りまく。
しかし、最初の妻・イヴァナに実権の多くを任せたことなどから次第に事業が傾き、90年代には巨額の債務を抱えた。カジノやホテルが相次いで倒産し、不採算事業となっていた「トランプ・シャトル」や、鳴り物入りで手に入れた「プラザ・ホテル」も手放している。その後もイヴァナとの離婚訴訟の際の泥仕合があり、一部事業の売却など苦難が続いた。なおイヴァナとは1992年に離婚が成立し、翌年にはモデルのマーラ・メープルズと再婚している。
不動産王に返り咲き、悲願の大統領就任
やがて、ロスチャイルドなどの協力を得て危機を脱出。ニューヨーク証券取引所への上場や好景気を背景に復活を成し遂げ、ラスベガスやアトランティック・シティなどに多数のホテルやカジノをオープンさせて再び不動産王に返り咲いた。2000年の大統領選挙には、アメリカ合衆国改革党の予備選挙に出馬したものの落選。2004年からNBCのリアリティー番組「アプレンティス」に出演。人気番組となり、トランプの知名度もアップ。私生活では1999年にマーラとの離婚を経て、2005年にスロベニア出身でモデルのメラニアと結婚。2006年に息子のバロンを授かった。
2012年には共和党候補として、大統領選への出馬意向を示したが実現しなかった。しかし4年後の大統領選では、216人の共和党の候補者を予備選挙で全て破った。ただ、トランプがメキシコやムスリムに対して強硬な発言を繰り返したことで国内外に反発を招き、メディアの多くが批判的な反応をした。ネガティブキャンペーンも大々的に展開され、一時は民主党候補のヒラリー・クリントンの勝利は確実と見られたものの、結局はトランプが勝利し、第45代大統領に就任することとなった。
大統領選に敗北するも常に話題の中心に
ちなみにトランプは、軍や政府の役職にまったく就いたことがないアメリカ初の大統領である。就任演説では「アメリカ第一主義」を掲げ、保護主義や孤立主義的な主張を展開。既存の国際合意や政策の枠組みを否定する独特な政治姿勢を打ち出した。しかし、2期目を目指した2020年の大統領選挙では、民主党候補のジョー・バイデンに敗北。落選後も敗れた接戦州での投票結果の確定阻止を求めて訴訟を乱発、2021年1月には数千人のトランプ支持者が連邦議会議事堂に乱入して占拠する事件が発生するなど、常に話題の中心となった。
2023年3月には、選挙に不利になる情報に絡む支出を隠すため、業務記録に虚偽記載をしたなどとして、34の罪でニューヨーク州・マンハッタンの大陪審から起訴された。大統領経験者の起訴はアメリカ史上初のことである(2024年5月に有罪評決)。2024年7月には、ペンシルバニア州にて大統領選に向けた選挙集会の演説中に銃撃され、右耳を負傷した。ただ、流血しながらも群衆に向かって拳を突き上げ、「Fight(戦え)!」と叫ぶ姿はまさにヒーロー然としたもので、衝撃的な事件に遭遇しながらも存在を大いにアピールした。
そして大統領選挙にあわせて、ドナルド・トランプがどんな人物なのかを知ることができる番組が多数放送される。毛嫌いする人が多い反面、熱狂的なファンも多く、アメリカの近代史において彼ほど強烈で、人々を引きつけた大統領は類を見ないといえる。この機会に、その特異な人間性に深く触れて11月5日(火)に投票が行われる大統領選挙に注目してみてはいかがだろうか。
文/渡辺敏樹