西山朋佳女流王将への挑戦権を懸けたトップ女流棋士たちの戦い!
2024.08.27
西山朋佳女流王将への挑戦者を決める霧島酒造杯第46期女流王将戦。予選を経て16人による本戦トーナメントも進み、いよいよベスト4が出そろった。タイトルホルダーの西山は現在、女流王将の他に「白玲」と「女王」を保持する三冠で、女流棋界の8つのタイトルを福間香奈女流五冠と分け合っている状態だ。女流王将は通算4期獲得で、今期防衛を果たせばクイーン称号(通算5期獲得)の資格を得る。
西山は先日、プロ公式戦で規定の成績を収めて棋士編入試験の受験を表明。史上初となる女性棋士への挑戦で、こちらの編入試験は9月から始まる(1ヶ月に1局で五番勝負)。西山にとっては白玲戦七番勝負、女流王将戦三番勝負と2つの防衛戦と並行しての戦いとなる。そんな西山への挑戦権を懸けた準決勝のカードは、渡部愛(まな)女流三段─福間香奈女流五冠、伊藤沙恵女流四段─香川愛生(まなお)女流四段と、いずれもタイトル獲得経験のある強豪だ。
渡部は前期、前々期と連続で挑戦者決定戦に進みながら、惜しくも挑戦権獲得はならず。女流王将戦ではまだ三番勝負の出場経験はなく、今期こそ初の挑戦権を目指す。一方、福間は誰もが知る女流棋界の第一人者。女流タイトル獲得数は歴代1位で、この女流王将戦だけでも登場11回、獲得8期ですでに永世称号であるクイーン王将の資格を持っている。2年前の第44期で西山に女流王将を奪われており、今期は奪還を目指しての戦いだ。福間と西山によるタイトル戦は令和の女流ゴールデンカードであり、近いうちに百番指しにも到達するだろう。
福間と渡部の対戦成績は福間から見て11勝6敗。ダブルスコアに近い差ではあるが、第一人者の福間にこれだけ勝っている女流棋士はほとんどおらず、渡部が食い下がっていると見るべきかもしれない。戦型としては、福間の中飛車に渡部の居飛車持久戦が本命ではないかと思われる。
香川は前期、渡部との挑戦者決定戦を制して三番勝負に登場した(結果は西山が2連勝で防衛)。女流王将戦は相性の良いタイトル戦でこれまでに獲得2期、登場も5回とタイトル戦への登場はすべて女流王将戦に集中している。勢いのある棋風で、女流のタイトル戦で一番短い早指しがマッチしているのかもしれない。2回戦では、元奨励会1級の俊英である今井絢女流初段を破っている。
一方の伊藤も実績十分の強豪で、福間、西山に次ぐ2番手グループに加藤桃子女流四段と共に名を連ねている。女流王将戦は2017年の第39期で挑戦しており、今回は久しぶりの挑戦を目指す。2回戦ではライバルの加藤を破って勝ち上がった。伊藤と香川の対戦成績は、伊藤から見て10勝6敗と伊藤が押している。互いに居飛車、振り飛車を指し、戦型の幅が広いため予想は難しいが、棋風通り香川が攻め、伊藤が受けに回る展開になるだろう。
本戦トーナメントはテレビ棋戦らしく持ち時間は25分、切れたら1手40秒とスピード感のある早指し戦だ。本命の福間が挑戦権を獲得し、西山─福間のゴールデンカードとなるか。それとも他の3人が待ったをかけるのか。今期の挑戦権争いもいよいよ大詰めだ。
文/渡部壮大