いよいよ銀河戦に登場!羽生善治九段の強さとは

いよいよ銀河戦に登場!羽生善治九段の強さとは

羽生善治九段はタイトル獲得数(99期)、棋戦優勝回数(46回)がともに歴代1位であり、将棋界を代表する棋士だ。2023年6月からは日本将棋連盟の会長に就任。運営の中心を担いながら、棋士としても戦い続けている。

羽生は史上3人目の中学生棋士として1985年にデビュー。以来40年近くにわたり、第一線で戦い続けている。数多くの記録を持っており、現代の第一人者である藤井聡太竜王・名人がこれから塗り替えていくべき目標にもなっている。1996年に七冠制覇(当時)を達成した時は社会現象にもなった。2018年の竜王戦で失冠して無冠になったものの、人生の半分以上にわたってタイトルを持ち続けていたことになる。その後は調子を落とす時期もありA級からも陥落したが、このところは復活して昨年は久しぶりのタイトル挑戦も果たした。現在も各種棋戦で上位に顔を出しており、今なおトップ棋士の一人として存在感を見せ、通算100期目のタイトルの期待がかかる。

銀河戦では歴代最多となる5回の優勝を誇っている(非公式戦時代にも2回優勝)。前期は同学年の丸山忠久九段が決勝で藤井聡太銀河(当時)を破り初優勝。会長として表彰に立ち会っていた。いわゆる羽生世代は50代になっても早指しで強さを見せており、年齢を気にすることなく優勝を目指すだろう。

羽生の強さとしては、年齢を重ねた今となっても最新型や相手の得意な戦法にあえて立ち向かうところが挙げられる。若い頃から意欲的な作戦も含めて戦法の幅が広く、その積み重ねが今となっても最前線で戦い続けられる秘訣(ひけつ)だろう。2021年に大きく成績を落とした時は衰えたとも言われたが、その後は復調。今にして思えばAI研究に適応するための過渡期だったのかもしれない。会長として多忙な日々を過ごす中、いつ研究しているかは不思議なくらいだが、現在でも最新型に飛び込んで序盤戦術に後れを取ることはない。もちろん「羽生マジック」と呼ばれた逆転術も健在で、終盤の競り合いにも力を発揮。早指し棋戦での優勝の多さも、秒読み勝負の強さを表している。

今期の銀河戦ではEブロックの9回戦から登場する。相手は5連勝で勝ち上がってきた梶浦宏孝七段だ。梶浦七段が連勝を伸ばしているため、羽生以降に登場する棋士が決勝トーナメントに進むには、最終勝ち残り者を目指すしかない状況になっている。公式戦における過去の対戦成績は羽生から見て2勝1敗で、早指しで対戦するのは初めて。共に居飛車党であり、角換わりか相掛かりから攻め合いの将棋が予想される。早指しは一般的には若手が有利といわれているが、羽生クラスには関係ないだろう。

なお、羽生の後ろには稲葉陽八段、丸山九段と、銀河戦で優勝経験のある棋士が3人並んでおり、実績十分のブロックだ。前期の本戦ブロック最終戦では藤井銀河(当時)に敗れたが、内容は角換わり腰掛け銀の後手番を受けて立って二転三転の激戦で、早指しにおいても今なおトップクラスであることを示した。ブロックによっては最多連勝者が決まり、徐々に決勝トーナメントのメンバーがそろい始めている第32期銀河戦。第一人者の藤井竜王・名人が2年ぶり3回目の優勝を果たすか、羽生九段をはじめとした実績のある棋士が優勝するか、はたまた新鋭や伏兵の初優勝となるか。これからトップ棋士が続々登場するので、ますます目が離せない。

文/渡部壮大