矢本悠馬が過酷な撮影を振り返る「(山崎賢人と山田杏奈の) 2人の明るさと優しさには救われました」
国内ドラマ インタビュー
2024.10.01
矢本悠馬が、10月6日(日)からスタートする「連続ドラマW ゴールデンカムイ ―北海道刺青囚人争奪編―」に出演する。
同ドラマは、野田サトルによる累計発行部数2900万部超の大人気コミック「ゴールデンカムイ」を実写化したもので、1月に公開され動員210万人超、興行収入30億円の映画『ゴールデンカムイ』の続編。北の大地を舞台に、莫大なアイヌの埋蔵金を巡る一攫千金ミステリーと、厳しい北海道の大自然の中でひと癖もふた癖もある魅力的なキャラクターたちによって繰り広げられる、埋蔵金争奪の冒険サバイバル・バトルアクション。
明治末期の北海道。日露戦争を生き抜いた元軍人・杉元(山崎賢人 ※崎は立つ崎)は、アイヌの少女・アシリパ(山田杏奈)(※アシリパの「リ」は小文字)、網走監獄の脱獄囚・白石(矢本)とともに、金塊のありかを示す暗号を彫られた24人の"刺青囚人"を探していた。だが、「第七師団」を率いる鶴見中尉(玉木宏)、新選組「鬼の副長」こと土方歳三(舘ひろし)も囚人たちを狙う。杉元たちは旅路で、アシリパの父の古き友人・キロランケ(池内博之)、アイヌの女性・インカラマッ(高橋メアリージュン)(※インカラマッの「ラ」は小文字)、「札幌世界ホテル」のおかみ・家永(桜井ユキ)など、腹の中が読めない者たちと出会う。
今回、白石を演じる矢本にインタビューを行い、この一大プロジェクトに参加する心境や、演じる上で意識したこと、撮影秘話、もし莫大な金塊を手にしたら何に使うかなどについて語ってもらった。
――映画の続きをドラマで描くという一大プロジェクトに参加することに関する心境はいかがでしたか?
「スケールが大き過ぎて、いつもとは違う緊張感だったりプレッシャーみたいなものは感じていたと思います。撮影の初日はどの作品でも硬くはなりますけど、いつも以上に『自分が気負っていて、ちょっと硬くなっているな』と感じて、未だに『俳優としての反省点だな』と思っています」
――撮影の途中から参加されたということもあるのでは?
「そうですね。映画とドラマ9話分の台本が全部出来上がっている状態だったので、ロケ地の都合で僕は映画ではなく、ドラマの方のシーンで先にクランクインしたんです。だから、杉元、アシリパに会う前に土方一派とのシーンからで、白石のコミカルで自由なシーンではなく、ちょっとシリアスめのシーンが入口でした。なんとなく"エンジンの回転数が乗っていかない"みたいな感覚があって苦労しました。やっぱり先に派手なシーンをかましちゃう方が、役はつかみやすかったり構築しやすかったりするので」
――さまざまな媒体で原作ファン&"白石推し"を公言してらっしゃいますが、そんな一押しのキャラクターを演じた感想は?
「"原作を読んでいる時の脳"と"演じる時の脳"って全然違っていますね。演じるとなって『どうすれば白石由竹の魅力を自分の体を使って倍増させることができるのか』『原作ファンの人たちを楽しませられるのか』と思った時に、他のキャラクターはそれぞれ背負っているものがあって金塊争奪戦に向かう信念や思想みたいなものがある中で、白石にはそれがなくて。"事情もよく知らないまま刺青を彫られて、何か儲かる話があるから一番優しそうな杉元たちに付いている"というテンションの、登場人物たちの中でも異色キャラクターだから、白石が出てくるだけで物語のリズムに変化が生じるような"彩り"を芝居で与えられたらいいなと思いながら演じました」
――白石とご自身との共通点は?
「いい意味で"責任感のなさ"じゃないですかね(笑)。"適当"に生きていくのって結構難しいと思っていて、ちょっと足元をすくわれて信用や信頼を失って孤独になってしまう状況でも、パーソナルなキャラクター性で『愛らしい』と感じさせる"適当"さって男心をくすぐるなと。"なんか適当に生きていて幸せな奴"って、うらやましいじゃないですか。僕はそういう男に小学生の頃から憧れていて、そういう感じの方向に向かって生きてきたから、白石にうらやましさと同時にシンパシーも感じますね」
――演じる上でこだわったポイントは?
「白石って『どう演じても解釈としていい奴になっちゃうな』と思って、それだけじゃ物足りないから"余白"が欲しいなと思ったんです。白石の刑が重くなった理由って、"憧れのシスターに会いたくて何度も脱獄したから"っていうだいぶかわいい理由なんですけど、それでも名だたる囚人たちと一緒に過ごしていて裏社会の人間であることには変わらないし、個人的には『人間的にずるい奴なのかな』とも思っているので、視聴者の皆さんに『最後まで白石がいい奴か悪い奴かよく分からなかったな』と思ってもらえるのが、白石を演じる上での美学なのかなと。光もあるし影もある。ただ、どちらもだいぶポップという(笑)」
――山崎さん、山田さんとの思い出は?
「雪山の撮影って、寒いだけじゃなく体力的にも過酷で...。そんな中で、2人がいつも明るくいてくれたというのが、白石のポップなテンションをキープするのに、すごく支えられました。ずっと3人でくだらない話をして楽しく過ごしたからこそ乗り切れたと思うし、もし2人が人見知りだったり物静かな人だったりしたら、あそこまで白石のテンションをキープできなかったと思うので」
――過酷な現場だからこそ、仲間との絆が大事だったりするのですね。
「衣装一つとっても、中に着込むっていっても限界があって、そんなに着込めないじゃないですか。革靴で爪がはがれそうなくらい冷たいし、手もむきだしで頭も刈られて坊主だし(笑)。そんな心が荒みがちな状況だからこそ、2人の明るさと優しさには救われましたし、『一発で決めようぜ!』っていう団結力がありました」
――白石は「脱獄王」ですが、ご自身に「○○王」と付けるなら何ですか?
「『服バカ王』ですね。好き過ぎて服を買うことを止められないんです(笑)。中学生になって急に親が服を買ってくれなくなって、突然、お小遣いから買うというシステムに切り替わったんですよ。そんな時に、当時大好きだったDragon AshのKjが着ていたブランドのジャケットが欲しくて、お金を貯めて買いに行ったんです。でも、いざ買うとなると、せっかく貯めたお金がなくなってしまうから、気持ち的には『品切れでもいいかな』くらいのテンションだったのですが、奇しくもぴったりのサイズがあって。それでも迷っていたら、父親から『服は出会いなんだから、この出会いは大事にした方がいいぞ』って言われて買ったんです。その時の言葉がずっと残っていて、今でも自分で店に足を運んで、出会いを大事にして買うというのがこだわりですね。ここまでバカだと、もう『この服、俺のことを呼んでるな』と錯覚してるんです」
――もし8000億円の金塊を手に入れたら何使いますか?
「古着が豊富な町を町ごと買おうかな。デニムがよく出る炭鉱の土地とかもそのまま買いたいですね(笑)。あ、いや、欲しい物は自分で買わなきゃ駄目ですね!そっちの方が大事にするから。何でも買えるとなると自分のセンスもブレていきますしね。だから、全額困っている人のために使います!」
――最後に視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。
「ドラマ版は、映画の短い時間では出せなかった魅力が詰まっていて、原作が好きな人はより楽しめるものになっていると思います。コメディーの部分やグルメシーンも豊富になっていますし、毎話ごとにキャラクターたちが増えていって、そのキャラクターたちのそれぞれ異なる個性や独自の戦い方が繰り出されるアクションシーンは本当に魅力的で、WOWOWじゃないと実現しなかったシーンやせりふが盛りだくさんです。こんなに面白いものを見ちゃった後、他の作品を選ぶのが大変になるだろうなというくらい自信を持っておすすめできる作品なので、ぜひ9話まで存分に楽しんでいただきたいです」
文=原田健 撮影=皆藤健治
スタイリング=丸山晃 ヘアメイク=永瀬多壱(ヴァニテ)
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